
指定流通機構は、正式名称を「Real Estate Information Network System」といい、その頭文字をとって「レインズ(REINS)」と呼ばれています。国土交通大臣が指定した不動産流通機構であり、全国に4つの団体が存在します。
指定流通機構の主な役割は以下の通りです。
🎯 物件情報の共有システム
レインズは宅建業者間で物件情報を共有し、安全かつ迅速な不動産取引を実現することを目的としています。登録された物件情報は、瞬時に全国すべての会員不動産会社に提供され、広く公開されることで取引機会の拡大を図っています。
💻 リアルタイム処理システム
全国にホストコンピュータが設置され、不動産物件情報の登録・検索がオンラインで迅速に処理されています。不動産情報の提供(登録)と受取り(検索)などの情報交換がリアルタイムで行われており、効率的な不動産流通を支えています。
📊 市場の透明性向上
指定流通機構により物件情報が標準化され、市場の透明性が向上しています。これにより、適正な価格形成と公正な取引環境の実現に貢献しています。
1988年の宅地建物取引業法改正によりスタートしたレインズは、現在では日本の不動産流通において欠かせないインフラとなっています。
宅建業者が指定流通機構に物件を登録する義務は、媒介契約の種類によって異なります。
📋 登録義務がある契約類型
❌ 登録義務がない契約類型
専任媒介契約と専属専任媒介契約では、依頼を受けた物件を国土交通省令で定める指定流通機構へ登録することが法的に義務付けられています。この登録期間の計算では、宅建業者の休業日は含まれません。
⚠️ 登録義務違反のリスク
指定流通機構への登録を怠った場合、宅建業者は指示処分を受ける可能性があります。実際の過去問でも、この点について問われることが多く、実務上も重要な留意点となっています。
📝 一般媒介契約での取り扱い
一般媒介契約の場合、指定流通機構への登録は任意ですが、媒介契約書には指定流通機構への登録について記載する必要があります。登録しない場合は「指定流通機構への登録=無」と記載することになります。
この登録義務は、専任契約を結んだ依頼者に対して、より広範囲での買主探索を保証するという意味があり、専任契約の対価として宅建業者に課せられた重要な義務といえます。
指定流通機構に登録する際の必須事項は、宅建業法施行規則で詳細に定められています。
📋 必須登録事項
🔍 各登録事項の詳細
所在・規模・形質について
物件の所在地、土地面積、建物面積、構造、築年数など、物件を特定し評価するために必要な基本情報を登録します。これらの情報は、他の宅建業者が顧客のニーズに合致するかを判断する重要な要素となります。
価格情報について
売買価格については、売主の希望価格や市場相場を考慮した適正な価格を登録する必要があります。交換の場合は、交換対象物件の評価額を明記します。
法令制限について
都市計画法に基づく用途地域、建蔽率・容積率、建築基準法による制限、その他の法令による制限など、物件の利用や建築に影響する主要な制限事項を記載します。
❗ 登録してはいけない事項
一方で、「宅地の上に存する登記された権利の種類及び内容」など、登記情報については登録義務がありません。これは物件の基本情報と法的制約に焦点を当てた制度設計となっているためです。
この登録事項は、全国の宅建業者が物件情報を効率的に検索・活用できるよう標準化されており、適切な情報登録により円滑な不動産流通が実現されています。
指定流通機構に物件を登録した後、宅建業者には重要な書面交付義務が課せられています。
📄 登録証明書面の交付義務
指定流通機構に物件を登録すると、指定流通機構から「登録を証する書面」が発行されます。宅建業者は、この書面を遅滞なく依頼者に引き渡さなければなりません。
⚠️ よくある誤解と注意点
🏢 実務での取り扱い方法
実務では、以下の流れで書面交付が行われます。
この書面交付により、依頼者は自分の物件が確実に指定流通機構に登録され、広く情報公開されていることを確認できます。
📊 書面交付義務違反への処分
登録証明書面の交付を怠った場合、宅建業者は指示処分を受ける可能性があります。過去の行政処分事例でも、この義務違反が処分理由として挙げられるケースがあり、実務上の重要な留意点となっています。
🕐 交付時期の具体例
過去問では「登録してから14日後に交付した」というケースでも適法とされており、「遅滞なく」の解釈には一定の幅があることが示されています。ただし、できる限り速やかな交付が望ましいことは言うまでもありません。
専任媒介契約や専属専任媒介契約に基づく売買契約が成立した場合、宅建業者には指定流通機構への通知義務が課せられています。
📞 契約成立時の通知義務
売買・交換契約が成立したとき、宅建業者は遅滞なく以下の事項を指定流通機構に通知しなければなりません。
❌ 通知事項に含まれないもの
一般的に誤解されやすいのですが、以下の情報は通知義務の対象外です。
⏰ 通知のタイミング
契約成立の通知は「遅滞なく」行う必要があり、物件の引渡し完了を待つ必要はありません。売買契約が成立した時点で、速やかに通知義務が発生します。
🏢 実務での対応方法
実務では、売買契約締結後に以下の手順で通知を行います。
📈 通知制度の意義
この通知制度により、指定流通機構は市場の取引動向をリアルタイムで把握でき、適正な価格情報の蓄積と提供が可能になります。また、他の宅建業者にとっても、類似物件の成約価格情報として活用できる貴重なデータとなります。
⚠️ 通知義務違反のリスク
契約成立通知を怠った場合も、指示処分の対象となる可能性があります。過去の行政処分事例では、この義務違反により処分を受けた宅建業者の事例も存在し、適切な通知管理が重要です。
現代の不動産流通において、指定流通機構は単なる物件情報の交換システムを超えて、市場の透明性確保と適正取引の実現に向けた重要なインフラとして機能しています。宅建業者として、これらの義務を正確に理解し、適切に履行することが、信頼される不動産取引の実現につながります。