

新住宅市街地開発法は、1963年に制定された法律で、住宅に対する需要が著しく多い市街地の周辺地域における住宅市街地の開発に関して必要な事項を規定しています 。この法律の主目的は、健全な住宅市街地の開発及び住宅に困窮する国民のための居住環境の良好な相当規模の住宅地の供給を図り、国民生活の安定に寄与することです 。
参考)https://iqrafudosan.com/channel/newurbanresidentialareadevelopment-law
新住宅市街地開発事業の特徴として、単なる住宅だけでなく、道路・公園・学校・病院・ショッピングセンター・事業所など、生活に必要なすべての機能を備えた複合都市機能を持つ本格的なニュータウンづくり事業であることが挙げられます 。開発にあたっては事業区域の土地を全面的に買収し、マスタープランに基づいて宅地や公園用地・道路などを造成した後、公募を原則として住宅の需要者に売却する方法がとられます 。
事業の施工者は、都道府県・政令市・住宅供給公社・都市再生機構(UR都市機構)のいずれかが一般的で、規模が大きいことが特徴です 。
新住宅市街地開発法に基づく代表的な事例として、千里ニュータウンや多摩ニュータウン、つくば研究学園都市などが挙げられます 。これらのニュータウンは、1970年代後半までにほとんどの事業が決定されており、高度成長期の住宅不足を解消する重要な役割を果たしました 。
参考)https://iqrafudosan.com/channel/shinjutakushigaichi-kaihatsujigyo
千里ニュータウンは日本で初めて新住宅市街地開発法に基づいて開発されたニュータウンとして知られ、計画的な住宅市街地の開発モデルとなりました 。多摩ニュータウンは国内最大規模のニュータウン事業として位置づけられています 。
参考)https://newtown-sketch.com/blog/20210926-30614
これらの事業では、地方公共団体が事業主体となり用地を買収して行い、一気に住宅地の造成および処分、そして住宅地と一体となる公共施設を整備するため、比較的短期間で事業を完了させることが可能でした 。
新住宅市街地開発法では、開発疑似便乗者による不動産の転売益を阻止し、健全な街の形成を保証するため、厳格な規制が設けられています 。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E4%BD%8F%E5%AE%85%E5%B8%82%E8%A1%97%E5%9C%B0%E9%96%8B%E7%99%BA%E4%BA%8B%E6%A5%AD
建築物の建築義務として、第31条により、建築物を建築すべき宅地を譲り受けた者(国等を除く)は、その譲受けの日の翌日から起算して5年以内に、処分計画で定める規模及び用途の建築物を建築しなければならないと定められています 。
参考)https://note.com/nagoya_kokusyo/n/neecf8b4880cb
権利の処分制限として、第32条第1項により、工事完了公告の日の翌日から起算して10年間は、造成宅地等または造成宅地等である宅地の上に建築された建築物に関する所有権や使用貸借権、賃借権等の設定・移転等については、都道府県知事の承認を受けなければならないとされています 。
宅地建物取引士が行う重要事項説明において、新住宅市街地開発法は重要な位置を占めています 。具体的には、新住宅市街地開発法第31条及び第32条第1項の規定に基づく制限について説明する必要があります 。
参考)https://theredocs.com/pm/knowledge/legal_regulation
特に賃貸については、第32条第1項の「建物に賃借権を設定するには、知事の承認を要する」という規制が重要です 。この制限を知らされずに賃貸借契約を結んでしまうと、借主は当然その土地や建物を使用できなくなってしまう可能性があります 。
参考)https://takken-success.info/2015kakomon/27-31/
無許可で結んだ売買契約や賃貸借契約などは無効となる場合があるため、不動産取引における重要事項説明で必ず説明されなければならない事項として位置づけられています 。建物の貸借では基本的に法令上の制限についての説明が不要ですが、新住宅市街地開発法32条のみは説明しなければならない例外規定となっています 。
参考)https://takken-siken.com/kakomon/2015/31.html
現在、多くのニュータウンでは人口減少と急速な高齢化という深刻な問題に直面しています 。例えば、泉北ニュータウンでは1992年のピーク時から5万人の人口減少が発生し、住民の約4割が65歳以上という高齢化が進行しています 。
参考)https://concours.toshokan.or.jp/intro/240005
千里ニュータウンにおいても、住民の定住志向が高まる一方で新たな住宅供給が行われなかったことから、子世代の転出と相まって人口減少と高齢化が急速に進み、地域活力の低下や交流の場の減少といった問題が顕在化しています 。
参考)https://www.kansai-u.ac.jp/ordist/ksdp/danchi/124.pdf
現代においては人口減少社会を迎え、大規模ニュータウン整備の時代は終わりつつあり、新住宅市街地開発事業適用の場はなくなりつつあることも事実です 。今後の都市整備は密集市街地改善等既成市街地再編に重点が置かれ、多様な事業手法のメニューを用意することが重要とされています 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/journalcpij/44.3/0/44.3_235/_article/-char/ja/
しかし、ニュータウン再生の取り組みとして、まちの魅力を取り戻し子育て世代を惹きつける仕組みや、ライフステージに合わせた地域内住み替えの循環構造整備など、持続可能なまちづくりへの転換が模索されています 。