大気汚染防止法特定施設一覧と規制基準の完全解説

大気汚染防止法特定施設一覧と規制基準の完全解説

大気汚染防止法で定められた特定施設について、ばい煙発生施設、一般粉じん発生施設、特定粉じん発生施設、VOC排出施設の種類や規模要件、届出義務を詳しく解説。不動産業務や工場運営で必要な法的知識を身につけませんか?

大気汚染防止法特定施設一覧と規制基準

大気汚染防止法特定施設の基礎知識
🏭
4つの主要施設区分

ばい煙発生施設、一般粉じん発生施設、特定粉じん発生施設、VOC排出施設に分類

📋
届出義務と規模要件

一定規模以上の施設は設置60日前までに都道府県知事への届出が必要

⚖️
排出基準と罰則

施設ごとに定められた排出基準の遵守と違反時の改善命令や罰則

大気汚染防止法特定施設のばい煙発生施設詳細

大気汚染防止法では、工場や事業場に設置される施設のうち、大気汚染の原因となる物質を排出する可能性がある33種類の施設を「ばい煙発生施設」として指定している 。ばい煙発生施設は、硫黄酸化物、ばいじん、有害物質(カドミウム、塩素、フッ素、鉛、窒素酸化物)を発生させる施設として定義されている 。
参考)https://www.env.go.jp/air/osen/law/t-kise-0.html

 

最も代表的なばい煙発生施設はボイラーで、燃焼能力が重油換算で50リットル/時以上のものが対象となる 。その他にも、ガス発生炉や加熱炉(原料処理能力20トン/日以上または燃焼能力50リットル/時以上)、焙焼炉・焼結炉、ガスタービンなどが含まれる 。
参考)https://www.pref.kyoto.jp/tango/ho-tango/documents/taikil.pdf

 

🏭 主要なばい煙発生施設と規模要件

  • ボイラー:燃焼能力50リットル/時以上(重油換算)
  • ガス発生炉・加熱炉:原料処理能力20トン/日以上または燃焼能力50リットル/時以上
  • コークス炉:原料処理能力1日当たり20トン以上
  • ガスタービン・ディーゼル機関:燃料燃焼能力重油換算1時間当たり規定値以上

これらの施設を設置・変更する事業者は、工事着手の60日前までに都道府県知事への届出が義務付けられており、届出受理日から60日間は工事実施が制限される 。
参考)https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000018997.html

 

大気汚染防止法一般粉じん発生施設の種類と規模要件

一般粉じん発生施設は、石綿を除く鉱物や土石などから一般粉じんを発生・排出・飛散させる施設として、大気汚染防止法施行令別表第2で5種類が規定されている 。これらの施設は主に採掘業、建設業、セメント製造業などで使用される産業機械が対象となる。
参考)https://www.city.shizuoka.lg.jp/s5382/s004080.html

 

一般粉じん発生施設一覧
参考)https://www.city.yamato.lg.jp/gyosei/soshik/66/kogai/todokede_shinsei/5614.html

 

  1. コークス炉:原料処理能力が1日当たり50トン以上
  2. 鉱物・土石の堆積場:面積が1,000平方メートル以上
  3. ベルトコンベア・バケットコンベア:ベルト幅75センチメートル以上またはバケット内容積0.03立方メートル以上(鉱物・土石・セメント用、密閉式除く)
  4. 破砕機・摩砕機:原動機定格出力75キロワット以上(鉱物・岩石・セメント用、湿式・密閉式除く)
  5. ふるい:原動機定格出力15キロワット以上(鉱物・岩石・セメント用、湿式・密閉式除く)

これらの施設は、粉じんの飛散防止のため、構造・使用方法・維持管理の基準が定められている 。届出義務については、一般粉じん発生施設は設置・変更する前に届出が必要で、ばい煙発生施設の60日前届出とは異なる点に注意が必要である 。
参考)https://www.pref.nara.jp/59949.htm

 

大気汚染防止法特定粉じん発生施設とアスベスト規制

特定粉じん発生施設は、アスベスト(石綿)を取り扱う工場や事業場に設置される施設で、大気汚染防止法施行令別表第2の2により9種類が規定されている 。アスベストは発がん性物質として国際的に使用が禁止されており、日本でも2006年から原則として製造・使用が禁止されているが、既存施設の管理や解体時の飛散防止が重要な課題となっている。
参考)https://www.pref.oita.jp/uploaded/life/2301501_4493794_misc.pdf

 

特定粉じん発生施設一覧

  • 解綿用機械:原動機定格出力3.7キロワット以上
  • 混合機:原動機定格出力3.7キロワット以上
  • 紡織用機械:原動機定格出力3.7キロワット以上
  • 切断機:原動機定格出力2.2キロワット以上
  • 研磨機:原動機定格出力2.2キロワット以上
  • 切削用機械:原動機定格出力2.2キロワット以上
  • 破砕機・摩砕機:原動機定格出力2.2キロワット以上
  • プレス(剪断加工用):原動機定格出力2.2キロワット以上

特定粉じん発生施設には、敷地境界基準として大気中の石綿濃度が1リットルにつき10本以下という厳格な規制が適用される 。また、建築物の解体等を行う際は、事前調査により特定建築材料(吹付け石綿、石綿含有断熱材等)の有無を確認し、適切な飛散防止措置を講じることが義務付けられている 。
参考)https://www.env.go.jp/air/asbestos/litter_ctrl/index.html

 

大気汚染防止法揮発性有機化合物排出施設の詳細

揮発性有機化合物(VOC)排出施設は、2006年4月の大気汚染防止法改正により新たに規制対象となった施設で、光化学オキシダントや浮遊粒子状物質の原因となるVOCの排出抑制を目的としている 。VOCとは、大気中に排出された時に気体である有機化合物(浮遊粒子状物質及びオキシダントの生成原因とならない物質を除く)を指す 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/69/7/69_285/_article/-char/ja/

 

🎨 主要なVOC排出施設
参考)https://www.pref.okinawa.jp/kurashikankyo/kankyo/1018635/1004502/1004514.html

 

  1. 化学製品製造用乾燥施設:送風機送風能力3,000立方メートル/時以上
  2. 吹付塗装施設:排風機排風能力100,000立方メートル/時以上
  3. 塗装用乾燥施設:送風機送風能力10,000立方メートル/時以上
  4. 接着用乾燥施設:送風機送風能力5,000~15,000立方メートル/時以上(用途により異なる)
  5. 印刷用乾燥施設(オフセット輪転):送風機送風能力7,000立方メートル/時以上
  6. 印刷用乾燥施設(グラビア):送風機送風能力27,000立方メートル/時以上
  7. 工業製品洗浄施設:洗浄剤が空気に接する面の面積5平方メートル以上
  8. 揮発性有機化合物貯蔵タンク:容量1,000キロリットル以上

VOC規制の特徴は、法規制と事業者の自主的取組を組み合わせた「ベストミックス」アプローチを採用していることである 。自動車塗料業界では、この規制により溶剤系から水性系塗料への転換や塗装工程の省エネ化が促進された 。
参考)https://www.env.go.jp/content/000047888.pdf

 

大気汚染防止法特定施設の届出手続きと不動産業務への影響

大気汚染防止法に基づく特定施設の届出手続きは、不動産取引や工場用地の開発において重要な法的要件となる。特に宅建業者にとっては、工場用地や事業用不動産の取引時に、既存施設の法的適合性や新規施設設置時の制約を正確に把握することが必要不可欠である。

 

📋 届出手続きの概要

  • 設置届出:施設設置の60日前までに提出(一般粉じん発生施設は設置前)
  • 変更届出:構造・使用方法・処理方法変更の60日前まで
  • 使用届出:法改正等で新たに対象施設となった場合、30日以内
  • 廃止届出:使用廃止から30日以内
  • 承継届出:事業承継時は30日以内

届出先は施設所在地の都道府県知事(または政令市長)で、提出は正副2部が基本である 。届出内容が法令要件を満たしていない場合、計画変更命令や廃止命令が発せられる可能性がある 。
参考)https://info-navi.city.niigata.lg.jp/navi/procInfo.do?procCode=10517amp;fromAction=7

 

不動産業務における注意点として、工場用地のデューデリジェンスでは、既存施設の届出状況、排出基準への適合状況、維持管理記録の確認が重要である。また、新規開発案件では、想定される業種・施設に応じた環境アセスメントの要否判定や、近隣住民への説明責任も考慮する必要がある。

 

環境省による大気汚染防止法対象施設の詳細な施設分類と規模要件について
大分県作成の特定施設一覧表で具体的な届出対象施設と規模要件を確認