
不動産投資において法的調査は最も重要な要素の一つです。売主が対象物件を処分する権利・権限を有しているかの確認から始まり、登記簿謄本の詳細な分析が必要となります。
特に注意すべき点は以下の通りです。
意外に見落とされがちなのが、未登記建物の存在です。特に古い物件では、増築部分が未登記のまま放置されているケースが多く、これが後々の大きなトラブルの原因となります。
また、借地契約の内容確認も重要で、地代の改定条項や更新料の有無、建物の建て替え制限などを詳細に調査する必要があります。これらの情報は、将来の収益性に直接影響を与える要因となります。
物理的調査では、建物の構造的安全性と将来的な修繕コストの算定が主要な目的となります。特に重要なのはエンジニアリング・レポートの作成で、これには以下の項目が含まれます。
**PML(Probable Maximum Loss)調査**も見逃せない要素です。これは地震による予想最大損失率を算出するもので、保険料の算定や投資判断に大きく影響します。一般的に、PMLが15%を超える物件は要注意とされています。
土壌汚染については、フェーズI調査(地歴調査)から始まり、必要に応じてフェーズII調査(実際の土壌サンプリング)を実施します。特に工場跡地や給油所跡地では、重金属や揮発性有機化合物による汚染リスクが高いため、詳細な調査が不可欠です。
経済的調査では、物件の収益性と将来性を多角的に分析します。**DCF法(Discounted Cash Flow)**による評価が一般的で、以下の要素を詳細に検討します。
**レントロール分析**では、単に現在の賃料を確認するだけでなく、契約更新時期や賃料改定の可能性も評価します。特に定期借家契約の場合、契約終了時の空室リスクを適切に織り込む必要があります。
市場分析においては、人口動態や産業構造の変化も重要な要素です。例えば、オフィスビルの場合、テレワークの普及によるオフィス需要の変化を考慮した将来予測が求められます。
効果的なデューデリジェンス調査には、適切な専門家チームの編成が不可欠です。一般的なチーム構成は以下の通りです。
**調査期間の管理**も重要で、通常は2-4週間程度を要します。ただし、複雑な権利関係や大規模な土壌汚染が発見された場合は、さらに時間を要することもあります。
専門家間の情報共有システムを構築することで、調査の効率性と精度を向上させることができます。例えば、法的調査で発見された問題点を物理的調査チームと共有することで、より詳細な検査が可能になります。
調査結果を基にした投資判断では、リスク・リターン分析が重要になります。発見されたリスクを以下のように分類して対応策を検討します。
**価格調整交渉**では、発見された問題点の修繕費用を具体的に算出し、売買価格からの減額を求めることが一般的です。例えば、屋上防水の全面改修が必要な場合、その工事費用相当額の価格調整を要求します。
また、表明保証条項の充実も重要で、売主に対して物件の状況について詳細な保証を求めることで、後々のトラブルを防ぐことができます。特に土壌汚染や建築基準法違反については、発見時の責任分担を明確にしておく必要があります。
投資実行後も、定期的なモニタリング体制を構築し、市場環境の変化や物件の劣化状況を継続的に把握することが、長期的な投資成功の鍵となります。