
手付解除期日は、不動産売買契約において買主または売主が一方的に契約を解除できる最終期限を指します。民法557条第1項では「契約の履行に着手したあとはこの限りでない」と規定されており、理論上は「契約の履行着手前まで」が手付解除の期日となります。
しかし、「いつ履行に着手したのか」が不明確な場合もあり、解釈の違いからトラブルが生じる可能性があります。そのため実務では、契約上の特約として明確な「手付解除期限」を当事者の合意により定めることが一般的となっています。
手付解除期限の目安として、契約から決済までの期間に応じて以下のように設定されることが多いです。
・1ヵ月以内:残代金支払日の1週間前から10日前
・1ヵ月~3ヵ月:契約日から1ヵ月前後の日
・4ヵ月~6ヵ月:契約日から2ヵ月〜3ヵ月前後の日
・買主が住宅ローンをご利用する場合:融資利用による契約解除期日の翌日以降
融資承認取得期日は、「この日までには住宅ローンの本審査承認を受けて下さいね」という明確な期限日です。売買契約書や重要事項説明書に記載され、買主が利用予定の銀行やローンの金額とともに明示されます。
通常、売買契約後すぐに本審査の申し込みを行えば間に合う日付が設定されていますが、必ず確認が必要です。万が一、売買契約後すぐに本審査の申し込みを行わず、この期日までに本審査承認が出ない場合は売主とのトラブルに発展する可能性があります。
💡 実際の不動産取引では、事前審査を受けていない買主もいますが、本申込の手続きは売主にも直接影響するため、融資承認取得期日の把握は極めて重要です。
住宅ローンの審査プロセスは以下の流れで進みます。
・事前審査(仮審査)
・本審査申込
・本審査承認
・金銭消費貸借契約締結
手付解除期日と融資承認取得期日には密接な関係があります。特に住宅ローンを利用する買主の場合、これらの期日設定が取引の成否を左右する重要な要素となります。
融資承認取得期日までに融資が承認されなかった場合、融資利用の特約に基づき買主は契約を解除することが可能です。この際の解除は「白紙解除」となり、手付金や仲介手数料などが基の支払い主に戻ります。
一方で、期日管理を怠った場合のリスクは深刻です。
🔴 期日経過後のリスク
・融資利用特約を行使する権利が失われる
・手付解除せざるを得ない状況に陥る
・違約解除となり、契約書に定められた違約金が発生
実務上は、融資承認取得期日と契約解除期日を数日ずらすことが一般的です。これは解約合意書の取り交わしが間に合わないことを避けるためで、通常は次の土日程度の期間を設けます。
融資不承認による契約解除を行う際は、適切な手続きが不可欠です。買主は速やかに売主に融資不承認の事実を通知し、契約を解除する意思を明確に示す必要があります。
📋 正しい解除手続き
・書面による通知が必須
・金融機関からの融資不承認の証明書を添付
・内容証明郵便で直接売主に送付
・媒介業者にも同時に連絡
実は多くの人が知らない重要な注意点があります。媒介業者(不動産業者)に口頭で契約解除を伝えただけでは、それが売主に正確に伝わらず、トラブルに発展することがあります。また、媒介業者もローンが下りなければ自動的に売買契約が解除されると勘違いしている場合があるのです。
⚠️ 解除の種類による違い
融資利用の特約には「解除条件型(当然失効型)」と「解除権留保型(解除権行使型)」の2つのタイプがあります。
・解除条件型:契約解除期限を過ぎると自動的に契約解除
・解除権留保型:契約解除期限内に意思表示が必要
一般的には後者の解除権留保型が多く採用されており、買主が能動的に解除の意思表示を行う必要があります。
手付解除期日の判定で最も複雑なのが「履行の着手」の解釈です。民法上では双方のいずれかが履行に着手した時点で手付解除ができなくなりますが、何をもって「着手」とするかは事案によって異なります。
🏠 売主側の履行着手例
・移転登記の手続き実行
・物件の引き渡し準備
・境界確定測量の実施
・建物の解体工事着手(古屋付き土地の場合)
💰 買主側の履行着手例
・内金・中間金の支払い
・住宅ローンの金銭消費貸借契約締結
・引越し業者との正式契約
・リフォーム工事の発注
実際の判例では、単なる準備行為は履行の着手にあたらないとされています。例えば、引き渡しや代金支払いまでの準備段階は履行の着手にはなりません。
重要なポイントは、「契約相手が契約の履行に着手するまで」が正確な手付解除期日ということです。自分が契約の履行に着手していても、相手が着手していない状態なら手付解除が可能です。
📊 期日管理で確認すべき項目
・金融機関による融資審査の進捗状況
・契約書における契約解除期限
・契約書に明記されている融資承認予定日
・双方の履行着手状況の確認
不動産取引において、これらの期日管理は専門的な知識と経験が必要です。初めて不動産取引を行う方は、不動産業者や弁護士、司法書士などの専門家の意見を参考にすることが強く推奨されます。契約書の内容をよく確認し、慎重に取引を進めることで、不測のトラブルを回避することができます。