
土地収用法による事業認定手続きが不要となる最も重要なケースが都市計画事業における特例です。都市計画法第69条の規定により、都市計画事業として承認された事業については、土地収用法上の事業認定手続きを経ることなく、直接収用手続きに進むことができます。
この特例が設けられた理由は、都市計画事業の性格にあります。都市計画決定の時点において当該計画について、利害関係人、第三者機関及び行政機関の調整を十分経てきているため、計画自体の合理性は十分具備しているとされています。
📊 都市計画事業での事業認定不要の手続きフロー
都市計画事業において事業認定が不要となる判断基準は明確に定められています。事業承認の際に十分審査していることから、さらに土地収用法の事業認定の手続をとるとするのは、事業者に二重の手続をとらせることになり、不合理であるため事業承認の告示をもって土地収用法の事業認定の告示に代えることとされています。
具体的な適用要件として、都市計画法第61条における事業承認の要件を満たす必要があります:
⚠️ 重要なポイント
事業認定が不要といっても、土地収用の権限が無制限に付与されるわけではありません。都市計画決定時点での審査が土地収用法第20条の事業認定要件に相当する厳格な審査を経ているからこその特例措置です。
事業認定手続きが省略される場合の実務上の効果は複数あります。まず、起業者は事業認定の申請をすることなく、裁決申請の手続へと進むことができます。これにより、通常の土地収用手続きと比較して大幅な時間短縮が可能となります。
また、起業者には事業認定の告示があったとみなされる日から土地所有者及び関係人への周知義務が発生し、土地所有者及び関係人には裁決申請請求権や補償金の支払請求権が生じます。
💡 実務における注意点
事業認定が不要な場合でも、土地所有者等の権利保護は十分に図られています。都市計画事業における収用手続きでは、通常の土地収用法に基づく補償基準がそのまま適用されます。
補償の内容は以下の通りです。
🏠 特に重要な補償項目
事業認定が不要な都市計画事業であっても、収用される土地の所有者等に対する補償は手厚く行われます。特に居住用不動産の場合、生活再建に向けた総合的な支援策が講じられることが多いです。
現在の土地収用法における事業認定不要制度にはいくつかの課題が指摘されています。まず、都市計画事業以外での事業認定省略制度の拡充について検討が進められています。租税特別措置法の特例適用における事業認定不要の範囲拡大なども議論されています。
また、デジタル化の進展により、事業認定手続きの効率化も課題となっています。従来の紙ベースの縦覧制度から、オンラインでの情報公開への移行が検討されており、より透明性の高い手続きの実現が期待されています。
🔮 今後の制度改正の方向性
特に不動産業界では、都市再開発事業や市街地再開発事業における事業認定手続きの簡素化が実務上の大きな関心事となっています。これらの事業では、権利変換手続きと土地収用手続きが複雑に絡み合うため、手続きの合理化は業界全体の効率化につながる重要な課題です。
現行制度では、都市計画事業認可を受けた事業のみが事業認定不要の恩恵を受けられますが、将来的には民間主導の都市開発事業についても、一定の条件下で手続き簡素化が図られる可能性があります。これにより、不動産開発のスピードアップと権利者保護の両立が実現されることが期待されています。