

特定物債権とは、特定物の引渡しを目的とする債権のことです 。特定物とは、当事者が物の個性に着目して取引の対象とする物で、具体的には土地、建物、絵画、骨董品、中古車などが該当します 。これらの物は代替の利かない唯一性を持つため、「その物」でなければならないという特徴があります 。[1][2][3][4]
特定物債権では、債務者は目的物を引き渡すまでの間、善良な管理者の注意をもってその物を保存する義務を負います(民法400条)。この善管注意義務は、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まるものとされています 。
参考)https://www.crear-ac.co.jp/shoshi/takuitsu_minpou/minpou_0400-00/
宅建試験において、特定物債権は不動産取引の基本概念として頻出テーマです 。土地や建物の売買契約では、特定の不動産の引渡しを求める権利が発生するため、これが特定物債権に該当することを理解しておく必要があります 。
参考)https://info.yoneyamatalk.biz/%E6%B0%91%E6%B3%95/%E5%82%B5%E6%A8%A9%E3%81%AE%E7%A8%AE%E9%A1%9E%EF%BC%88%E7%89%B9%E5%AE%9A%E7%89%A9%E5%82%B5%E6%A8%A9%E3%83%BB%E7%A8%AE%E9%A1%9E%E5%82%B5%E6%A8%A9%EF%BC%89%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E8%A7%A3%E8%AA%AC/
種類債権とは、一定の種類に属する物の一定量の引渡しを目的とする債権です 。「不特定物債権」とも呼ばれ、物としての個性を持たず、種類と数量のみで指定される物の給付を目的とします 。例えば、「米20キロ」「ビール10本」「新車10台」などが典型例です 。[10][11][9]
種類債権の重要な特徴は、目的物が具体的に特定されるまでは履行が完了しないという点です 。民法401条により、品質が定められていない場合は債務者が中等の品質を有する物を給付する義務があります 。
参考)https://www.crear-ac.co.jp/shoshi/takuitsu_minpou/minpou_0401-00/
種類債権は、債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了したとき、または債権者の同意を得てその給付すべき物を指定したときに特定します 。この特定により、種類債権は特定物債権に変化するという重要な法的効果があります 。
参考)https://ja.wikibooks.org/wiki/%E6%B0%91%E6%B3%95%E7%AC%AC401%E6%9D%A1
特定物債権における債務者の注意義務は、民法400条で明確に規定されています 。債務者は引渡しを完了するまで、善良な管理者の注意をもって目的物を保存しなければなりません 。この善管注意義務は、一般的な注意義務よりも高い水準が求められる厳格な義務です 。[6][14][5]
2017年の民法改正により、善管注意義務の判断基準が明確化されました 。改正後は「契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意」とされ、契約の内容や取引の性質に応じて注意義務の程度が決定されます 。
参考)https://watanabelawoffice.com/law_amendment/item107.html
履行場所については、別段の意思表示がない場合は債権発生当時にその物が存在した場所とされています(民法484条)。また、引渡しに際しては、債務者は現状での引渡しで足りるとされていますが、善管注意義務違反による損害については責任を負う場合があります 。
参考)https://kotobank.jp/word/%E7%89%B9%E5%AE%9A%E7%89%A9%E5%82%B5%E6%A8%A9-341131
種類債権では、目的物の品質が重要な争点となります 。民法401条1項により、法律行為の性質又は当事者の意思によって品質を定めることができない場合、債務者は中等の品質を有する物を給付しなければなりません 。[12][13]
種類債権の特定は、以下の2つの場合に生じます :
参考)http://takken-text.net/%E5%82%B5%E6%A8%A9%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%83%BB%E7%A8%AE%E9%A1%9E.html
特定の具体的なタイミングは債務の種類によって異なります 。持参債務では債権者の住所で提供した時点、取立債務では債務者が給付すべき物を用意して債権者へ通知が完了した時点、送付債務では債務者の土地から送付した時点で特定します 。
宅建業務において、特定物債権と種類債権の区別は極めて重要です 。不動産取引では、土地や建物は必ず特定物として扱われるため、売主は善管注意義務を負います 。[8][9]
建売住宅の販売では、完成前の契約は種類債権的要素を含む場合があります。しかし、具体的な区画や仕様が決定された時点で特定物債権に転化するため、売主の責任も変化します。マンションの分譲販売でも、部屋番号や設備仕様が確定した段階で特定物債権となります。
賃貸借契約では、特定の物件を対象とするため特定物債権が成立し、貸主は物件の維持管理について善管注意義務を負います。この義務は、建物の構造や設備の保全、安全性の確保など多岐にわたり、宅建業者が仲介する際の重要な説明事項となります 。
参考)https://www.sumai1.com/useful/words/description/n/1687/