
税理士法第52条では、税理士又は税理士法人でない者は税理士業務を行ってはならないことを明確に規定している 。税理士業務には税務代理、税務書類の作成、税務相談が含まれ、これらは税理士の独占業務とされている 。
参考)https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishiseido/qa/06.htm
無資格者による税務相談は、報酬の有無に関わらず税理士法違反となる。これは「無償独占業務」と呼ばれ、たとえ善意で行われた場合でも法律違反となる 。社会保険労務士などの専門資格を持つ者でも、税理士登録をしていなければ税務相談を行うことはできない 。
参考)https://kmp.or.jp/article/kakuteisikokutetudai.html
税務相談の範囲は広く、具体的な税額計算、節税方法のアドバイス、申告書作成の指導など、税務に関する個別具体的な相談は全て税理士の独占業務に該当する 。
参考)https://www.bizup.co.jp/column/management/s65.php
税理士法第59条第1項第3号では、無資格者が税理士業務を行った場合、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられる 。これは刑事罰であり、軽い気持ちで引き受けたとしても重いペナルティが待っている 。
参考)https://www.kyuhokuzei.or.jp/caution/
名義貸しを行った税理士についても、税理士法第37条の2違反として、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられる可能性がある 。無資格者が作成した申告書等に税理士が署名した場合も同様の処罰対象となる 。
参考)https://okizei.or.jp/assets/upimg/news26/17527384408459/file.pdf
税理士自身が違反行為を行った場合、懲戒処分として戒告、2年以内の税理士業務の停止、税理士業務の禁止の3段階の処分がある 。最も重い税理士業務の禁止処分を受けると、税理士の資格が剥奪され、3年間は再受験もできない 。
参考)https://www.tokyozeirishikai.or.jp/common/pdf/tax_accountant/ihan/ihan_qanda.pdf
令和6年度は6月時点で既に38名の税理士が懲戒処分を受けており、前年度と同数に達するほど急増している 。処分の内訳として、「信用失墜行為」が最多の23件、「帳簿作成義務違反」13件、「故意による不真正税務書類の作成」11件となっている 。
参考)https://www.zeikei-news.co.jp/zeikei/no2204/
「非税理士に対する名義貸し」による処分も5件発生しており、無資格者への名義貸しが継続的な問題となっている 。また、業務停止処分中に申告書を作成する違反や、停止中の税理士から依頼を受けて名義を貸す行為も処分対象となっている 。
具体的な処分事例では、関与先からの依頼により虚偽の確認書を作成し、相続税の課税価格を圧縮した申告書を作成したケースや、源泉所得税額を不正に圧縮した計算書を作成したケースで、1年5か月の業務停止処分が科せられている 。
税理士業務を依頼する際は、必ず税理士バッジを身につけているかを確認し、税理士会への登録状況を照会することが重要である 。税理士登録番号の確認や、所属税理士会での登録状況の確認を怠らないようにしたい。
記帳代行業務については、記帳自体は税理士の独占業務ではないが、税務署への提出書類の作成、税務相談、税務代理は税理士の独占業務となる 。境界線を明確に理解し、違法なサービスを利用しないよう注意が必要である。
参考)https://bizneko.jp/column/certified-public-accountants-act/
企業においては、社員が自社の税務業務を行うことは税理士法違反に該当しない 。しかし、他社の税務業務を行う場合は税理士資格が必要となるため、業務範囲を明確に区分することが重要である 。
税務相談の境界線を理解することが最も重要である。一般的な税制の説明や、公開されている情報の提供は問題ないが、個別具体的な税額計算や節税アドバイスは税理士の独占業務となる 。「悩み相談」の範疇を超えた具体的な税務アドバイスは避けなければならない 。
参考)https://zeirishic.com/content/unqualified-taxaccountant.html
不動産、保険、金融業界で働く者は、業務上税務知識を持っていることが多いが、専門的なアドバイスを求められた際は「税理士に確認してください」と断ることが必要である 。知識があることと、法的にアドバイスできることは全く異なる概念である。
もし税理士法違反が発覚した場合、事実確認と内部調査、弁護士への相談、税理士会への報告など、段階的な対応が必要となる 。早期の適切な対応により、被害を最小限に抑えることができる可能性がある 。
参考)https://tax.mitsukaru-pro.co.jp/zeirishi/268