
平成30年住宅・土地統計調査によると、全国の空き家率は年々上昇傾向にあり、849万戸(13.6%)が空き家となっている状況です。特に「その他の住宅」として分類される、賃貸用・売却用・二次的住宅以外の空き家の割合が増加傾向にあります。
国土交通省は、この深刻化する空き家問題に対応するため、平成27年2月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が制定されたことを受けて、各自治体における空き家バンク制度の設置・運営を積極的に支援しています。
空き家バンク制度は、自治体が空き家・空き地の情報を収集し、利活用希望者に紹介する公的な制度です。市区町村が運営主体となり、空き家の所有者から登録を受けた物件情報をウェブサイトや閲覧簿で公開し、利用希望者とのマッチングを図ります。
空き家バンクの基本的な仕組みは以下のような流れになっています。
📋 登録から成約までの流れ
重要なポイントは、自治体は不動産取引の仲介業務は行えないため、マッチング成立後の具体的な交渉や契約手続きは、宅建業者や不動産会社が担当することです。これは宅建業法の規定により、不動産の媒介には宅建業の資格が必要なためです。
自治体の役割は主に以下の3点に限定されます。
従来、各自治体が個別に運営していた空き家バンクには、情報項目の統一性がない、検索機能が不十分といった課題がありました。
この問題を解決するため、国土交通省は平成29年に「全国版空き家・空き地バンク」を構築しました。現在、以下の2社が国土交通省の委託を受けて運営を担っています:
🌐 全国版空き家バンクの運営体制
この全国版システムにより、利用者は全国の空き家バンク情報を一括検索できるようになりました。ただし、すべての自治体の空き家バンクが参加しているわけではないため、物件探しの際は全国版と自治体サイトの併用が推奨されています。
国土交通省の資料によると、全国版空き家・空き地バンクの構築により、空き家等所有者に対する安心感(信頼感)による空き家情報の掘り起こし効果が期待されています。民間不動産業者に対して警戒心が強い所有者でも、自治体が介入することで相談しやすくなるというメリットがあります。
空き家バンクへの登録には、自治体ごとに設定された一定の条件があります。一般的な登録条件は以下の通りです:
✅ 主な登録条件
特に注意が必要なのは、建築基準法や都市計画法への適合性です。これらの法律に適合していない物件は登録できないため、事前に市区町村の建築窓口や都市計画窓口での確認が必要です。
また、多くの自治体では「不動産業者に売却を依頼していないこと」を登録条件としています。これは空き家バンクが民間の不動産流通を補完する役割を担っているためです。
国土交通省の調査データによると、令和元年時点で全国1,261の自治体で空き家バンクが設置されている一方で、特に小規模自治体での設置が進みにくい状況が課題として挙げられています。
空き家バンク制度には、不動産従事者が理解すべき重要な課題があります。
🔍 認知度の低さという根本的課題
公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会の調査によると、空き家バンクの認知度はわずか24.1%に過ぎません。この低い認知度は、利用者数の少なさにつながり、結果的に買い手が見つかりにくい状況を生み出しています。
⚠️ 制度運営上の構造的問題
自治体は営利を目的としないため、積極的な営業活動や物件の宣伝を行わないという特徴があります。これは民間不動産業者とは大きく異なる点で、空き家の早期売却が困難になる要因となっています。
また、仲介役がいない場合、所有者が購入希望者と直接交渉する必要があり、専門知識がない所有者にとって大きな負担となります。
📊 取り組みの継続性に関する課題
国土交通省の報告書では、「取組みの継続性の担保方法」が重要な課題として指摘されています。年度ごとの予算や人員配置により、自治体の空き家バンク運営体制が不安定になる可能性があります。
💡 不動産従事者にとっての新たな機会
一方で、この制度は不動産従事者にとって新たなビジネス機会も創出しています。多くの自治体が宅建業者との連携を求めており、自治体との協力関係構築により、空き家物件の仲介業務受託の可能性が広がっています。
特に地方の不動産業者にとって、地域に根ざした空き家活用支援は重要な収益源となる可能性があります。国土交通省も「自治体と宅建業者の役割分担を明確にした連携」を推奨しており、この分野での専門性向上が求められています。
空き家バンク制度は、国土交通省の政策として重要な位置を占める一方で、実効性向上には民間不動産業者との連携強化が不可欠な状況です。不動産従事者は、この制度の特徴と課題を正確に理解し、地域の空き家問題解決に貢献できる体制整備を進めることが重要です。
空き家・空き地バンク総合情報ページ(国土交通省)
国土交通省が構築・運営支援する全国版空き家・空き地バンクの最新情報
空き家・空き地バンク導入のポイント集
自治体向けの空き家バンク設置・運営ガイドライン(国土交通省)