
不動産取引において「一般媒介」と「仲介」は似ているようで、実は異なる概念です。一般媒介契約は売主が不動産会社と結ぶ契約の種類を指し、複数の不動産会社と同時に契約を締結できる最も自由度の高い契約形態です。
一方、仲介は不動産会社が行う業務の形態を表し、売主と買主の間に立って取引を成立させる行為全般を指します。つまり、一般媒介は契約の「種類」、仲介は不動産会社の「業務内容」という根本的な違いがあります。
法律的な観点から見ると、媒介は「双方の間に立って取り持つこと」、仲介は「第三者が両当事者の間に立ってその便宜をはかったりまとめたりすること」と定義されています。不動産業界では、媒介は主に売却時の契約関係を表現する際に使用され、仲介は取引全体のプロセスを表現する際に使用される傾向があります。
一般媒介契約には「明示型」と「非明示型」の2種類があります。明示型では、売主が他の不動産会社に並行して仲介を依頼している会社名を通知する義務を負います。一方、非明示型では通知義務がありません。一般的には明示型での契約が多く採用されています。
一般媒介契約の特徴として、複数の不動産会社と契約が可能であり、契約期間に制限がなく、自己発見取引も認められています。また、不動産会社にはレインズ(不動産流通標準情報システム)への登録義務や売主への販売活動報告義務がありません。
この契約形態は、売却を考えている物件に魅力があり、高値で売る自信がある場合に特に効果的です。立地や間取り、築年数などの条件面で強みがある物件であれば、買主候補への間口が広がる一般媒介契約が有効な選択肢となります。
仲介業務には、物件の紹介、取引条件の調整、契約書の作成、引き渡しの手続きなど多岐にわたるサービスが含まれます。不動産会社は、売主または買主の依頼を受けて相手方を探し、媒介契約締結の仲立ちを行います。
仲介手数料は取引が成立した場合にのみ発生する成功報酬型で、法律で上限が定められています。具体的には**売買価格の3%+6万円(税別)**が上限となっており、売却額が高いほど仲介手数料も高くなる仕組みです。
両手仲介と片手仲介という概念も重要です。両手仲介では、同一の不動産会社が売主と買主の両方から仲介手数料を受け取るため、収益が倍増します。5,000万円の不動産の場合、片手仲介では156万円(税別)、両手仲介では312万円(税別)の差が生まれます。
一般媒介契約の最大の戦略的メリットは、囲い込みの防止です。専任媒介契約では、不動産会社が両手仲介を狙って物件情報を他社に流さない「囲い込み」が発生する可能性があります。一般媒介契約では複数社が関わるため、このような不適切な営業行為を防ぐことができます。
また、競争原理の活用により短期間での売却が期待できます。複数の不動産会社が同時に営業活動を行うことで、各社のポータルサイトに物件が掲載され、情報の広がりが早くなります。さらに、各社お抱えの買主にも物件情報が届くため、売却機会が大幅に拡大します。
一般媒介契約では、売主が自分で買主を見つける自己発見取引も可能です。これにより、仲介手数料を節約しながら独自のネットワークを活用した売却活動も並行して行えます。ただし、明示型では通知している不動産会社以外に売却を依頼すると、広告費用の返還を求められる可能性があるため注意が必要です。
不動産の媒介契約には、一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類があります。それぞれの特徴を表で比較すると以下の通りです:
契約種類 | 複数社契約 | 自己発見取引 | レインズ登録 | 報告義務 | 契約期間 |
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一般媒介契約 | ⭕可能 | ⭕可能 | ❌義務なし | ❌義務なし | 制限なし |
専任媒介契約 | ❌1社のみ | ⭕可能 | ⭕7日以内 | ⭕2週間に1回以上 | 3ヶ月以内 |
専属専任媒介契約 | ❌1社のみ | ❌不可 | ⭕5日以内 | ⭕1週間に1回以上 | 3ヶ月以内 |
実際の選択においては、7~8割の売主が専任・専属専任契約を選択していますが、売れない場合に一般媒介契約に切り替えるケースも多く見られます。やりとりが大変でも早く売りたい方や不動産会社を競わせたい方には一般媒介契約が適しており、やりとりを最小限に抑えたい方には専任系契約が推奨されます。
不動産売買における契約選択は、物件の特性、売主の状況、市場環境を総合的に考慮して決定することが重要です。短期間での売却を目指す場合は一般媒介契約の競争原理を活用し、じっくりと売却活動を行いたい場合は専任系契約で密なサポートを受けるという使い分けが効果的です。