
不燃材料は建築基準法第2条第9号により明確に定められている建築材料です。建築基準法では、不燃材料について以下の3つの条件を満たすことが要求されています:
不燃材料の特徴として、加熱開始後20分間はこれらの性能を維持することが求められます。これは防火材料の分類の中で最も高い性能を持つものです。
建築基準法で定められている防火材料の分類は以下の通りです。
防火材料の種類 | 性能維持時間 |
---|---|
不燃材料 | 加熱開始後20分間 |
準不燃材料 | 加熱開始後10分間 |
難燃材料 | 加熱開始後5分間 |
不燃材料には鉄鋼、アルミニウム、石材、コンクリート、ガラスなど天然無機物質や、国土交通大臣の認定を受けた製品があります。
耐火構造は、単一の材料ではなく、複数の不燃材料を組み合わせて構築される建物全体の構造システムです。建築基準法では、耐火構造について主要構造部に耐火性能を有する構造と定義しています。
耐火構造の重要な特徴は以下の通りです。
耐火構造の構築例として、間仕切り壁の場合を見ると、1時間非耐力壁の場合は「中空鉄骨の両脇にケイカル板総厚24mm(積層)NM8576・NM8577」という具体的な構成が指定されています。
この構成は以下のような理由で有効です。
不燃材料として使用される製品は、建築基準法に基づく厳格な認定制度により管理されています。国土交通大臣が定めたもの、または国土交通大臣の認定を受けたものが不燃材料として認められます。
認定番号の例。
認定制度では以下の点が厳しく審査されます。
興味深い点として、鉄板は不燃材料に含まれますが、不燃材料でないパイプに鉄板を被覆しただけでは不燃材料として認められません。これは材料の本質的な性能が重要であることを示しています。
耐火構造では、単一の不燃材料では実現できない総合的な防火性能を、複数の不燃材料の組み合わせにより達成します。この組合せ効果は以下のメカニズムで発揮されます。
多層防御システム。
実際の木造耐火構造の例では、構造躯体をせっこうボード等の不燃材料で被覆することで、収納可燃物がある程度燃えてから構造躯体が燃え出すように燃え方を緩慢にした建物となります。
時間稼ぎ効果。
耐火構造の目的は完全に火災を防ぐことではなく、避難時間を確保することです。1時間耐火構造の場合、1時間までの耐火性能確保はもちろん、それ以降も非損傷性、遮熱性、遮炎性が確保されることが求められます。
相乗効果の発現。
複数の不燃材料を組み合わせることで、以下の相乗効果が生まれます。
不動産業従事者にとって、不燃材料と耐火構造の違いを理解することは実務上極めて重要です。特に防火地域や準防火地域での建築計画において、この知識は以下の場面で活用されます。
建築確認申請での注意点。
コスト計画への影響。
耐火構造の建物では、以下のコスト要因を考慮する必要があります。
将来の法改正対応。
建築基準法の改正により、不燃材料の基準や耐火構造の要求性能が変更される可能性があります。平成12年の法改正では、耐火構造に有機質材料の使用条件が変更されました。
実際の物件評価への応用。
不動産評価において、以下の観点から建物の防火性能を評価します。
興味深い事実として、木材を利用した耐火構造の技術開発が進んでおり、従来のイメージを覆す革新的な建築手法が実用化されています。これは不動産市場にも新たな可能性をもたらす技術革新といえるでしょう。
国土技術政策総合研究所における木造耐火構造の最新研究成果