
管理費と修繕積立金は、マンション運営において異なる役割を担っています。管理費は通常の管理を行うための経費にあてるためのもので、修繕積立金は計画修繕のために積み立てておく費用です。
管理費の主な使途
修繕積立金の主な使途
修繕積立金が大規模修繕工事などの「特別な管理」に充てられるのに対し、管理費は「日常的な管理」に対して使用されます。
国土交通省の「令和5年度マンション総合調査」によると、マンション1戸あたりの管理費・修繕積立金の平均は以下の通りです。
項目 | 平均(1ヶ月あたり) |
---|---|
管理費 | 17,103円 |
修繕積立金 | 13,378円 |
合計 | 30,481円 |
この数値は駐車場使用料等からの充当額を含む総額となっています。ただし、管理費・修繕積立金は、マンションの総戸数や築年数などによっても大きく変動することに注意が必要です。
特に築年数が経過するにつれて修繕積立金は段階的に値上げされる傾向があり、購入時の金額だけでなく将来的な負担増も考慮した検討が重要となります。
管理費等の額は、各区分所有者の共用部分の共有持分に応じて算出するのが標準的です。共用部分の共有持分割合とは、専有部分の床面積の割合となり、広い住戸に住んでいる人は管理費等の負担金額が多くなります。
負担割合の計算例
この負担割合を定めるにあたっては、使用頻度は勘案されません。つまり、エレベーターを頻繁に使用する高層階の住戸と、階段を使用することが多い低層階の住戸でも、専有面積が同じであれば負担額は同一となります。
近年、多くのマンションで管理費・修繕積立金の値上げが相次いでいます。実際の事例では、修繕積立金が8,700円から13,700円へ、さらに18,700円へと段階的に値上げされるケースも報告されています。
値上げの主な背景
首都圏中古マンションでは、管理費がじわじわと膨らむ一方で、修繕積立金が削られ続けている状況も指摘されています。これは、管理費の増加圧力により、本来必要な修繕積立金の積立が困難になっているためです。
6割のマンションの修繕積立金は不足していると言われており、適切な修繕が行われないマンションの将来に懸念が高まっています。
不動産投資において、管理費・修繕積立金は収益性に直結する重要な要素です。一般的な相場との比較だけでなく、以下の独自視点での評価が重要となります。
戸数規模による効率性評価
大規模マンションほど管理費の戸当たり負担が軽減される傾向があります。管理会社の人によると、大規模修繕費は戸数×160万が実際にかかる概算金額とされており、この数値を基準とした修繕積立金の妥当性評価が可能です。
管理組合の財務健全性チェック
重要事項調査報告書には、管理費や修繕積立金のマンション全体の滞納額や修繕積立金の積立金合計額が記載されています。これらの情報から、以下の評価指標を算出できます。
将来負担予測モデル
築年数と修繕積立金の関係性を分析することで、将来的な負担増を予測できます。一般的に築15年を境に修繕積立金の大幅な値上げが実施される傾向があり、この時期の投資判断には特に注意が必要です。
修繕積立金がマイナスの物件も存在しており、こうした物件では近い将来に大幅な値上げや一時金徴収のリスクが高いと判断できます。管理組合では修繕費の臨時徴収などが議論されますが、一時金の支払いを嫌がる所有者もあって、修繕が先送りされるケースも多く見られます。
このような状況を避けるため、投資前の詳細な財務分析と、管理組合の運営状況の把握が不可欠となります。適切な管理費・修繕積立金の設定がされているマンションを選択することで、長期的な投資収益の安定化が図れるでしょう。