
建築行為とは、建築基準法に基づく建築物の新築、増築、改築、移転等の行為を指します。不動産業従事者が理解すべき重要なポイントは、建築行為が既存の敷地で行われる場合、原則として土地の区画形質の変更を伴わないということです。
建築行為は以下の要素で構成されます。
市街化調整区域においては、開発行為を伴わない建築行為であっても、都市計画法第43条に基づく建築許可が必要となります。この許可は「建築行為の許可」と呼ばれ、開発許可とは区別される重要な手続きです。
開発行為は都市計画法第4条第12項において「主として建築物の建築または特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更」として定義されています。
土地の区画形質の変更は以下の3つの要素から成り立ちます。
重要な点として、単なる土地の分筆や合筆は区画形質の変更にあたらず、開発行為には該当しません。また、建物建築に付随する土地の掘削なども開発行為とはみなされません。
特定工作物には第1種特定工作物(コンクリートプラント等)と第2種特定工作物(ゴルフコース、1ha以上のグラウンドや墓苑等)があり、それぞれ異なる許可基準が適用されます。
建築行為と開発行為の許可要件には明確な違いがあり、不動産業従事者はこれらを正確に理解する必要があります。
開発許可の面積要件:
区域区分 | 建築物の建築目的 | 第一種特定工作物 | 第二種特定工作物 |
---|---|---|---|
市街化区域 | 1,000㎡以上 | 1,000㎡以上 | 1ha以上 |
市街化調整区域 | 面積による除外なし | 面積による除外なし | 1ha以上 |
建築許可の要件。
市街化調整区域では、開発行為を伴わない建築行為でも都市計画法第43条の建築許可が必要です。この許可には以下の基準が適用されます:
特に市街化調整区域においては、「区画形質の変更を行う場合は開発行為、行わない場合は建築行為」という明確な区分があります。この区分は開発許可制度の公平性と透明性を確保するために重要な判断基準となっています。
市街化調整区域は「原則として市街化を抑制すべき区域」として位置づけられており、建築行為には厳格な制限が課されています。この区域での建築行為には、開発行為を伴わない場合でも特別な許可が必要です。
建築許可が必要となる具体的ケース。
市街化調整区域における建築行為の許可基準は、都市計画法第34条各号と密接に関連しています。例えば、農業従事者の住宅や、やむを得ない事情による分家住宅などが該当します。
興味深いことに、市街化調整区域内の開発行為であっても、土地の「形」の変更(切土・盛土)をほとんど行わない場合は、より軽い手続きである「建築許可」で対応できる場合があります。これは実務上重要な判断ポイントとなります。
災害リスク地域での新たな規制。
令和4年4月1日より施行された都市計画法改正により、災害リスクの高いエリアにおける開発行為の抑制が強化されました。これにより、建築行為の計画時にも災害ハザード情報の確認が必要不可欠となっています。
不動産業従事者が実務で直面する建築行為と開発行為の判断は、多くの場合複雑な要素が絡み合います。正確な判断のためには以下の基準を総合的に検討する必要があります。
判断の基本フロー。
1️⃣ 土地の現況確認
2️⃣ 計画内容の精査
3️⃣ 区域区分の確認
実務上の重要な注意点。
よくある実務上の間違い。
建築行為と開発行為の区別は、土地の区画形質変更の有無という明確な基準がありながら、実際の適用では専門的な判断が必要となります。不動産業従事者は、個別案件ごとに行政庁への確認を怠らず、適切な手続きを踏むことが重要です。
また、近年の法改正により災害リスクへの配慮が強化されており、従来の許可基準に加えて防災面での検討も必要となっています。これらの変化に対応するため、継続的な法制度の把握と実務知識の更新が不可欠です。