
都市計画法では、土地利用を計画的に進めるために地域を3つの区域に区分しています。まず「市街化区域」は、すでに市街地を形成している区域や優先的・計画的に市街化を図るべき区域です。この区域では建物の建築制限はありません。
次に「市街化調整区域」は、都市の無秩序な拡大を防ぐために市街化を抑制すべき区域とされています。この区域では建物の建築に厳しい制限があり、許可が必要となります。
最後に「非線引き都市計画区域」は、区域区分を定めていない都市計画区域で、建物の建築制限はありません。
市街化調整区域内の農地については、農地法による規制と都市計画法による規制の両方が適用されます。農地を農地以外の用途に変更する「農地転用」を行う場合、市街化調整区域内では都道府県知事の許可が必要です。
農地法では、農地を守るために厳格な規制を設けており、無許可で転用を行った場合には工事の中止命令や原状回復命令、さらには罰則が科せられることもあります。
農地転用とは、農地であった土地を農地以外の用途(住宅、工場、倉庫、道路、駐車場、山林など)に変更することを指します。特に市街化調整区域内での農地転用は、都市の無秩序な拡大を防ぐという市街化調整区域の本来の目的と、農地の保全という農地法の目的の両方に関わる重要な手続きです。
市街化調整区域内の農地転用の重要性は以下の点にあります:
注目すべき点として、登記上の地目が農地となっている場合、現在耕作されていなくても農地法の規制対象となります。つまり、長年放置されて雑草が生い茂っている土地でも、登記上農地であれば転用許可が必要です。
また、農地の売買も、原則として農地転用の許可がなければ行えません。許可がないうちは所有権移転登記もできないため、不動産取引においては農地転用の可否が取引の成否を左右する重要な要素となります。
農地転用を行う際には、農地法第4条と第5条のどちらに基づいて申請するかを明確にする必要があります。この2つの条文は、転用の目的と所有権の移動の有無によって使い分けられます。
農地法第4条申請
農地法第5条申請
市街化調整区域内での農地転用申請の流れは以下の通りです。
市街化調整区域内の農地転用は許可基準が厳しく、特に優良農地(第1種農地や甲種農地)の転用は原則不許可とされています。ただし、農業用施設や公共施設など、一定の要件を満たす場合は例外的に許可される場合もあります。
市街化調整区域内で農地転用を行う際には、一般的な農地転用よりも厳格な審査が行われるため、より詳細な書類の準備が必要です。以下に必要な書類をまとめます:
基本的な必要書類
市街化調整区域特有の追加書類
市街化調整区域での農地転用申請には、都市計画法第34条に基づく開発許可も同時に必要となる場合が多いです。この開発許可は、市街化調整区域内での開発行為を制限するもので、農地転用許可とは別の手続きとなります。
申請の際の注意点として、各自治体によって受付期間が設けられていることがあります。この期間内に申請された書類は当月分として処理されますが、期間外の申請は翌月分として扱われ、処理が1ヶ月遅れることがあります。
また、申請書類の記載内容に不備があると差し戻しとなり、さらに時間がかかることになるため、事前に農業委員会や行政書士などの専門家に相談することをお勧めします。
市街化調整区域内の農地転用の難易度は、農地の区分によって大きく異なります。農地は以下のように区分され、それぞれ転用許可の難易度が異なります:
農地区分と転用許可の難易度
市街化調整区域内の農地は、多くの場合、甲種農地や第1種農地に分類されるため、転用許可を得ることが非常に困難です。しかし、以下のような場合には例外的に許可される可能性があります:
転用許可を得るための対策としては、以下のポイントが重要です。
特に注目すべき点として、市街化調整区域内の農地でも、農地法施行(昭和25年7月)以前から農地として使われていなかった土地については、地目変更登記を行うことで農地法の規制から外れる可能性があります。古い航空写真などで当時の土地利用状況を証明できれば、地目変更が認められるケースもあります。
市街化調整区域内の農地の売買と転用には、実務上いくつかの重要なポイントがあります。宅建業従事者として知っておくべき実務的な知識を整理します。
1. 売買契約時の注意点
市街化調整区域内の農地を売買する場合、通常の不動産取引とは異なる点に注意が必要です。
2. 転用後の登記手続き
農地転用許可後の登記手続きは以下の流れで行います:
3. 税金面での考慮事項
農地転用に伴う税金面での考慮事項も重要です。
4. トラブル事例と対策
実務上よくあるトラブル事例と対策を知っておくことも重要です。
特に注目すべき実務的なポイントとして、農地法施行前から農地として使われていなかった土地については、国土地理院の古い航空写真などを取得して証拠とし、農業委員会と協議の上で地目変更登記を行うという方法があります。これにより、農地法の規制を受けずに売買できる可能性があります。
このような専門的な対応が必要な場合は、不動産取引の専門家だけでなく、土地家屋調査士や行政書士など、農地転用に詳しい専門家と連携することが重要です。