
農業経営基盤強化促進法は、昭和55年(1980年)5月28日に公布された、日本の農業構造改革を推進する重要な法律です 。制定時の名称は「農用地利用増進法」でしたが、1993年の改正により現在の名称に変更されました 。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BE%B2%E6%A5%AD%E7%B5%8C%E5%96%B6%E5%9F%BA%E7%9B%A4%E5%BC%B7%E5%8C%96%E4%BF%83%E9%80%B2%E6%B3%95
この法律の目的は、効率的かつ安定的な農業経営を育成し、これらの農業経営が農業生産の相当部分を担うような農業構造を確立することです 。具体的には、農業者に対する農用地の利用集積、農業者の経営管理の合理化その他の農業経営基盤の強化を促進するための措置を総合的に講じることにより、農業の健全な発展に寄与することを目指しています 。
参考)https://www.pref.oita.jp/soshiki/15270/kibankyoukasokusinhou.html
農業経営基盤の強化は、他産業従事者並みの年間労働時間(1,750~2,000時間程度)で、他産業従事者並みの所得水準(主たる農業従事者1人当たりおおむね500万円の年間農業所得)を確保することを目標としています 。
参考)https://www.pref.gunma.jp/page/9147.html
認定農業者制度は、農業経営基盤強化促進法の中核をなす重要な仕組みです 。この制度は、農業者が市町村の農業経営基盤強化促進基本構想に示された農業経営の目標に向けて、自らの創意工夫に基づき経営の改善を進めようとする計画を市町村等が認定し、認定を受けた農業者に対して重点的に支援措置を講じるものです 。
参考)https://www.maff.go.jp/j/kobetu_ninaite/n_seido/seido_ninaite.html
認定を受けるためには、農業者は「農業経営改善計画」を作成し、市町村に提出する必要があります 。この計画には以下の4つの目標を記載します:① 経営規模の拡大に関する目標(作付面積、作付受託面積など)、② 生産方式の合理化の目標(機械・施設の導入、新技術の導入など)、③ 経営管理の合理化の目標(複式簿記での記帳など)、④ 農業従事の様態等に関する改善の目標(休日制の導入など)。
参考)https://inochio.co.jp/column/34/
認定農業者になることで、経営改善を目的とした農地・施設・機械などの必要資金に対する長期低利融資や、農業用機械等を導入する際の融資残を補助する補助金などの支援制度を活用できます 。令和5年度からは、農業用施設の整備に係る許認可のワンストップ化等の運用改善も行われました 。
利用権設定等促進事業は、認定農業者などの担い手に対する農用地の利用集積を図るため、農用地の賃貸借権等の権利移動を円滑にするための重要な事業です 。この事業により、農地法の許可を受けずに農地の貸借契約が可能となり、契約期間が到来すると確実に農地が返還される仕組みになっています 。
参考)https://www.hsnz.jp/kikoudata/hsnzcms/wp-content/uploads/2020/05/r2_kensyu_02.pdf
利用権とは、農業上の利用を目的とする農地の① 賃借権(対価を払って借りること)、② 使用貸借権(無償で借りること)、③ 経営受委託に係る使用収益権(委託を受けて農業経営を行い、収入を得ること)のことです 。対象となる農地等は、原則として市街化区域以外の農用地、混牧林地、農業用施設用地、開発して農用地又は農業用施設用地とすることが適当な土地です 。
借り手のメリットとしては、経営規模の拡大が図れること、農地を借りる際に農地法の許可が不要であること、賃借期間中は安心して耕作ができること、利用権の再設定により継続して借りることができることが挙げられます 。貸し手にとっても、農地を貸す際に農地法の許可が不要であり、貸した農地は期限がくれば必ず返ってくるため、安心して農地を貸すことができます 。
参考)https://www.city.fukushima.fukushima.jp/soshiki/18/2/424.html
農業経営基盤強化促進法には、認定新規就農者制度も含まれており、これは新たに農業を始める方を重点的に支援する制度です 。対象者は、新たに農業経営を営もうとする青年等で、青年(原則18歳以上45歳未満)、特定の知識・技能を有する中高年齢者(45歳以上65歳未満)、またはこれらの者が役員の過半数を占める法人です 。
参考)https://www.pref.gifu.lg.jp/page/311174.html
認定新規就農者の主な数値目標として、主たる農業従事者の年間労働時間は1,750~2,000時間程度、主たる農業従事者1人当たりの年間農業所得はおおむね250万円、1経営体当たりの年間農業所得はおおむね350万円が設定されています 。宮城県では、新規就農者を年間160人確保し、農業経営開始から5年後には主たる従事者1人あたりの年間農業所得240万円程度を目標としています 。
参考)https://www.pref.miyagi.jp/documents/18726/kihonnhoushinnmiyagi.pdf
2024年の改正では、農地貸借の仕組みが大きく変わり、2026年以降はすべての貸借契約が中間管理機構を通じたものに統一されることになりました 。地域計画が策定された地区では、相対契約による農地貸借が不可となり、全国的に中間管理機構を通じた契約に一本化されます 。これにより、農業法人や特定の農業経営体にとって、計画的な農地確保が容易になることが期待されています 。
参考)https://farm-navi.jp/015-2/
農業経営基盤強化促進法の実施により、地域農業には単なる個別経営の改善を超えた、独特の波及効果が生まれています。特に注目すべきは、集落機能を活かした効率的な地域営農体系の構築です 。これは、認定農業者を中心とした担い手に農地を集約することで、地域全体の農業生産性向上を図る仕組みです。
農業委員会による利用調整の推進により、日本政策金融公庫による配慮規定や国・自治体による担い手の経営改善努力が規定され 、単体の農業経営だけでなく地域農業システム全体の最適化が図られています。この法律により、効率的かつ安定的な農業経営が本県農業の相当部分を担う農業構造の確立を目指し、群馬県では効率的かつ安定的な経営体数6,300経営体を維持することが目標とされています 。
参考)https://www.maff.go.jp/j/keiei/koukai/ryuudouka/pdf/01_taikei.pdf
また、農用地利用改善事業や農業経営受委託促進事業などの多面的な支援により 、農業生産の基盤整備と開発、農業経営の近代化のための施設導入、農業に関する研究開発及び技術の普及といった関連施策が総合的に推進されています 。
参考)http://www.hayashi-zeimukaikei.jp/category/1487937.html
農林水産省による農業経営基盤強化促進法の詳細な体系図と制度解説
農林水産省による認定農業者制度の最新情報と申請手続きガイド