
災害対策基本法は、1961年に制定された日本の災害対策の基本となる法律です。この法律は、国土並びに国民の生命、身体および財産を災害から保護するため、防災に関する基本理念を定めています。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%81%BD%E5%AE%B3%E5%AF%BE%E7%AD%96%E5%9F%BA%E6%9C%AC%E6%B3%95
同法は1959年の伊勢湾台風の甚大な被害を受けて制定され、災害対策に関する各機関の責任の所在を明確にし、総合的かつ計画的な防災行政の整備を図ることを目的としています。
主な内容として以下が挙げられます。
・避難計画の策定
・災害時の体制の構築
・防災計画の作成
・災害予防、災害応急対策、災害復旧の体系化
参考)https://jp-bcp.co.jp/column/009-2/
災害対策基本法は、災害発生前から発生後まで幅広い時間軸をカバーし、国、都道府県、市町村、公共機関、住民それぞれの責務を定めています。
参考)https://arrows.peace-winds.org/journal/13412/
災害救助法は、1947年に制定された法律で、災害発生時の応急救助に特化した内容となっています。この法律の目的は、災害に際して国が地方公共団体や日本赤十字社などの協力の下に、応急的に必要な救助を行い、被災者の保護と社会の秩序の保全を図ることです。
参考)https://www.bousai.go.jp/taisaku/kyuujo/pdf/siryo1-1.pdf
災害救助法は都道府県知事が主体となり、現に救助を必要とする者に対して実施されます。救助の種類には以下が含まれます:
・避難所の設置
・応急仮設住宅の供与
・炊き出しによる食品の給与
・飲料水の供給
・被服、寝具等生活必需品の給与
・医療・助産
・被災者の救出
・住宅の応急修理
・埋葬
救助実施に要した費用については、国が負担することが規定されており、被災地域だけでは対応困難な財政的問題を解決する仕組みとなっています。
参考)https://gooddo.jp/magazine/climate-change/disaster/978/
両法の適用基準には明確な違いがあります。災害対策基本法は災害対策全般の枠組みを定める法律であり、特定の災害規模による適用基準は設けられていません。国や地方自治体は、平常時から災害対策基本法に基づいて防災計画を策定し、体制を整備する責務があります。
参考)https://www.city.kainan.lg.jp/kakubusho/soumubu/kikikanrika/saigaisonae/3924.html
一方、災害救助法には具体的な適用基準が設定されています。主な適用基準は以下の通りです:
参考)https://www.bousai.go.jp/kaigirep/shishiteikijun/dai1kai/pdf/shiryo03-2.pdf
住家等への被害による基準
・市町村の人口に応じて定められた世帯数以上の住家滅失
・例:人口5,000人未満の市町村では30世帯以上の住家滅失
生命・身体への危険による基準
・多数の者が生命または身体に危害を受け、または受けるおそれがある場合
・避難して継続的に救助を必要とする場合
これらの基準に該当した場合、都道府県知事により災害救助法が適用され、応急救助が実施されます。
参考)https://bosai-times.anpikakunin.com/bousai-disaster-relief-act/
災害対策基本法における実施主体と責任分担は階層的に構成されています。国は災害対策の基本方針を策定し、都道府県および市町村の活動を総合調整する役割を担います。
参考)https://www8.cao.go.jp/cstp/kyogikai/fukkou/6kai/sanko6-1-3.pdf
国の責務
・防災基本計画の策定
・災害予防、災害応急対策、災害復旧の基本計画作成
・法令に基づく実施と総合調整
参考)https://www.bousai.go.jp/shiryou/oukyuutaisaku/horei_1.htm
都道府県の責務
・地域防災計画の策定
・市町村の防災事務や業務の実施を支援
・広域的な災害対応の調整
参考)https://www.bousai.go.jp/fusuigai/subtyphoonworking/pdf/dai1kai/sankosiryo.pdf
市町村の責務
・基礎的な地方公共団体として防災対策を実施
・災害応急対策および応急措置の実施
・住民に最も近い立場での具体的対応
参考)https://www.jma.go.jp/jma/kishou/intro/gyomu/wxad/kensyu/h29/pdf/2-2-2.pdf
この体制により、それぞれの役割分担が明確化され、効率的な災害対応が可能となっています。
災害救助法が適用されると、救助の実施主体は市町村から都道府県に移行する特徴があります。通常の災害対応では災害対策基本法第5条により市町村が主体となりますが、災害救助法適用時は都道府県が救助実施の主体となります。
参考)https://isss.jp.net/isss-site/wp-content/uploads/2025/03/%E6%88%91%E3%81%8C%E5%9B%BD%E7%81%BD%E5%AE%B3%E6%95%91%E5%8A%A9%E6%B3%95%E5%8F%8A%E3%81%B3%E7%81%BD%E5%AE%B3%E5%AF%BE%E7%AD%96%E5%9F%BA%E6%9C%AC%E6%B3%95%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E6%A8%A9%E9%99%90%E3%83%BB%E8%B2%AC%E5%8B%99%E3%81%AE%E9%85%8D%E5%88%86%E3%81%AE%E3%81%82%E3%82%8A%E6%96%B9%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E8%AA%B2%E9%A1%8C%E2%80%95%E9%83%BD%E9%81%93%E5%BA%9C%E7%9C%8C%E3%81%A8%E5%B8%82%E7%94%BA%E6%9D%91%E3%81%AB%E6%B3%A8%E7%9B%AE%E3%81%97%E3%81%A6%E2%80%95.pdf
都道府県知事の権限と責任
・救助の適用決定
・救助の種類および程度の決定
・救助実施市への委任
・費用負担の申請
参考)https://www.bousai.go.jp/oyakudachi/pdf/kyuujo_a7.pdf
市町村の役割変化
・都道府県が実施する救助の補助
・委任を受けた場合の救助実施
・被害状況の報告と情報提供
この制度設計により、大規模災害時には都道府県レベルでの統一的かつ効率的な救助活動が可能となっています。ただし、救助実施市に指定された政令指定都市などは、都道府県と同等の救助実施権限を有します。
参考)https://jsite.mhlw.go.jp/tottori-roudoukyoku/content/contents/saigainaikakufu.pdf
災害救助法の運用においては、都道府県知事が内閣総理大臣との協議の上で特別基準を設定できる制度もあり、地域の実情に応じた柔軟な対応が可能となっています。この制度は、画一的な救助基準では対応困難な特殊な災害状況に対する重要な仕組みです。