生活扶助引上げ2025年度以降の不動産業界への影響

生活扶助引上げ2025年度の制度変更概要

政府は2024年12月25日、生活保護のうち「生活扶助」について、2025年度から2年間の特例として月500円の追加加算を決定しました。これにより、現在の月1000円の特例加算が1500円に引き上げられることになります。
この措置は、物価高騰の影響を受ける生活保護受給世帯への支援策として実施されるものです。厚生労働省の推計によると、月1500円の加算により、生活保護を受給する世帯のおよそ58％にあたる94万世帯で「生活扶助」の基準額が引き上げられると見込まれています。
また、今回の月1500円を加算しても昨年度の見直し前に比べて基準額が減る世帯については、元の水準で据え置く措置も継続されます。これは「従前額保障」と呼ばれる制度で、生活保護受給者の生活水準を維持するための重要な仕組みです。

生活扶助引上げ2025年対象世帯の詳細

生活扶助の引上げ対象となる世帯について、具体的な内訳を見ると、特に高齢者世帯や都市部居住世帯への影響が大きいことが判明しています。
対象世帯の構成は以下の通りです。

• 高齢者世帯：生活保護世帯の55.4％を占める高齢者世帯の多くが対象
• 都市部居住世帯：1級地の1（都市部）居住世帯の約4割が該当
• 単身世帯：特に75歳以上の単身世帯では大幅な増額が見込まれる
• 多人数世帯：世帯人員数に応じて加算額が増加

特に注目すべきは、都市部の高齢単身世帯（75歳）では、従来の基準では7.2万円から6.8万円へと5.9％の引下げが予定されていましたが、特例加算により実質的な減額を回避できることです。
不動産業界の観点から見ると、これらの対象世帯の多くが賃貸住宅に居住していることから、住宅扶助と合わせて家賃支払い能力の維持に寄与する可能性があります。

 

生活扶助引上げ2025における物価高騰の背景

今回の生活扶助引上げの背景には、深刻な物価高騰問題があります。弁護士の木下康氏の試算によると、生活保護受給者が生活費として使う「生活扶助」に関わる品目の物価上昇率は、2人以上の世帯で12.2％、単身世帯では12.5％に達しています。
これは一般的な消費者物価指数（CPI）の8.5％を大幅に上回る数値です。具体的な物価上昇の例として：

• 食料品価格：米の価格は1キログラム500円を突破し、過去最高を記録
• 光熱水費：夏季の冷房費負担が大幅に増加
• 日用品：生活必需品全般の価格上昇が継続

生活保護問題対策全国会議などの団体は、2025年度の生活扶助基準額を少なくとも7.7％以上引き上げることを要望しています。この7.7％という数字は、2020年4月以降の消費者物価指数の上昇率に基づいて算出されたものです。
しかし、実際の引上げ幅は月500円（約3％程度）に留まっており、物価上昇に十分対応できていない状況が続いています。

生活扶助引上げ2025年夏季加算創設の議論

2025年度の生活扶助見直しにおいて、特に注目されているのが「夏季加算」創設に関する議論です。生活保護問題対策全国会議は、夏季の光熱水費を賄うための夏季加算創設を強く要望しています。
現在、生活保護制度には冬季加算は存在しますが、夏季加算は設けられていません。しかし、近年の猛暑により夏季の冷房費負担が深刻な問題となっています。
夏季加算創設の必要性

• エアコン使用による電気代の急増
• 熱中症予防のための冷房使用の必要性
• 高齢者世帯での健康リスクの増大
• 既存の生活扶助では夏季光熱費を賄えない実態

実際に、50代の生活保護利用者は「今年の夏は猛暑と物価高で、とんでもなく地獄を見ている。室温が37～38度になっているが、部屋にあるのが古いエアコンなので、電気代が怖くて使うに使えない。熱中症になり、食事もまともに喉を通らなくなった」と証言しています。
エアコン購入費支給の拡大
団体は同時に、全ての生活保護利用世帯についてエアコン購入費用の支給を可能とすることも求めています。現在、エアコン購入費の支給には一定の条件がありますが、猛暑日の増加により全世帯での必要性が高まっています。

生活扶助引上げ2025年度制度見直しの長期的影響

2025年度の生活扶助引上げは、2年間の時限措置として実施されますが、その後の制度運用にも大きな影響を与える可能性があります。従来の5年に1度の定期見直しサイクルにも変更が検討されています。
見直しサイクルの短縮化
政府は、2027年末にある定期的な見直しを1年前倒しするなど、足元の経済情勢を適切に反映させる姿勢を示しています。これにより：

• より迅速な物価変動への対応が可能
• 経済情勢の変化に柔軟に対応する制度設計
• 受給者の生活実態により即した基準設定

国際比較による制度改善
ドイツでは市民手当の基準額について、物価上昇に応じた自動的な調整メカニズムが導入されており、2024年には563ユーロ（約9.1万円）へと前年比12％の大幅引上げが実施されました。さらに、基準額が引下げとなる場合は据え置かなければならないとの規定により、2025年も据え置きが決定されています。
このような国際的な動向も、日本の生活保護制度改善に向けた参考となっています。

 

不動産業界への波及効果
生活扶助の引上げは、住宅扶助制度とも密接に関連しており、不動産業界にとって以下の影響が予想されます。

• 生活保護受給者の住宅確保支援の重要性増大
• 適切な家賃水準の住宅供給への期待
• 保証会社や管理会社との連携強化の必要性
• バリアフリー住宅等の需要拡大

生活扶助引上げ2025年不動産業界における対応策

不動産業界として、生活扶助引上げに関連して講じるべき対応策は多岐にわたります。特に社会的責任を果たしながらビジネス機会を創出する視点が重要です。

 

住宅確保支援の強化
生活保護受給者向けの住宅確保支援において、以下の取り組みが求められています。

• 住宅扶助基準内での良質な住宅供給
• 初期費用軽減制度の導入
• 福祉部門との連携強化
• 入居審査における配慮事項の整備

設備・サービスの充実
夏季加算創設議論を受けて、以下の設備充実が注目されています。

• 省エネ型エアコンの標準装備
• 断熱性能の向上による光熱費削減
• 共用部でのクールシェア空間提供
• 見守りサービスとの連携

地域包括ケアシステムとの連携
高齢者世帯の増加に対応するため。

• 介護事業者との連携体制構築
• 医療機関へのアクセス確保
• 生活支援サービスとの連携
• 緊急時対応システムの整備

テクノロジー活用による効率化

• IoT機器による生活支援
• 遠隔見守りシステムの導入
• デジタル化による手続き簡素化
• エネルギー管理システムの活用

これらの対応策により、不動産業界は社会課題解決に貢献しながら、新たなビジネスモデルを構築することが可能となります。

 

厚生労働省の生活保護実施要領（2025年度版）：制度の詳細な運用規定
東京弁護士会による生活保護基準改定要望書：法的観点からの制度分析
つくろい東京ファンドの要望活動報告：当事者の声と実態調査結果