

都市緑地法は昭和48年(1973年)に「都市緑地保全法」として制定され、平成18年(2006年)に現在の名称に変更された法律です 。この法律は、良好な都市環境の形成を図り、もって健康で文化的な都市生活の確保に寄与することを目的として、都市における緑地の保全及び緑化の推進に関し必要な事項を定めています 。
参考)https://www.mlit.go.jp/toshi/kankyo/content/001883865.pdf
都市緑地法における「緑地」の定義は重要なポイントです。法第3条第1項では、「樹林地、草地、水辺地、岩石地若しくはその状況がこれらに類する土地(農地であるものを含む。)が、単独で若しくは一体となって、又はこれらと隣接している土地が、これらと一体となって、良好な自然的環境を形成しているもの」と定義されています 。特に、都市農地についても緑地として明確に位置づけられており、都市農業振興基本法との整合性が図られています 。
法律の運用にあたっては、都市計画制度、都市公園制度その他都市における自然的環境の整備又は保全を目的とする制度に加えて、都市緑地法に基づく制度を総合的かつ計画的に活用していくことが重要とされています 。
都市緑地法では、緑地の保全と緑化の推進を図るため、複数の制度が体系的に整備されています。主要な制度として、「特別緑地保全地区」「緑地保全地域」「緑化地域」「緑地協定」などがあります 。
参考)https://www.mizuho-re.co.jp/knowledge/dictionary/wordlist/print/?n=181
特別緑地保全地区は、都市における良好な自然的環境となる緑地において、建築行為など一定の行為の制限により現状凍結的に保全する制度です 。これにより豊かな緑を将来に継承することができます。一方、緑地保全地域は、都市近郊の比較的大規模な緑地において、比較的緩やかな行為の規制により、一定の土地利用との調和を図りながら保全する制度として位置づけられています 。
参考)https://www.mlit.go.jp/toshi/park/toshi_parkgreen_tk_000077.html
緑化地域制度は、建築物の建築に際して緑化率の最低限度を定めることで、都市の緑化を推進する制度です。平成29年の法改正により、従来建ぺい率の高い商業地域等においても、緑化率25%まで設定可能となりました 。これにより、商業地域などでの緑化推進が期待されています。
参考)https://www.mlit.go.jp/common/001341507.pdf
特別緑地保全地区の指定要件は、都市緑地法第12条に基づき明確に定められています。指定対象となるのは、無秩序な市街地化の防止、公害又は災害の防止等のため必要な遮断地帯、緩衝地帯又は避難地帯若しくは雨水貯留浸透地帯として適切な位置、規模及び形態を有するもの、神社・寺院等の建造物、遺跡等と一体となって伝統的又は文化的意義を有するもの、風致又は景観が優れているもの、動植物の生息地又は生育地として適正に保全する必要があるものなどです 。
参考)https://www.pref.gunma.jp/page/11479.html
特別緑地保全地区内で新築等の行為を行う場合は、都道府県知事の許可が必要となります 。面積による例外はなく、厳格な規制が適用されます。これは宅建試験でも頻出のポイントです 。
参考)https://www.ocean-stage.net/a-245/
また、特別緑地保全地区の指定に関して注目すべき点は、土地所有者からの買い入れ申し出制度です。特別緑地保全地区で、土地所有者から造成許可が受けられない等を理由に買い入れの申し出があれば、都道府県は買い入れる義務があります 。これにより、私有地の保全と所有者の権利保護の両立が図られています。
参考)https://note.com/greatwalker/n/n3c7bfc0e35b9
平成29年(2017年)6月に施行された都市緑地法改正は、現代のまちづくりの課題に対応するための重要な改正でした 。改正の主要なポイントは5つあります。
参考)https://www.mlit.go.jp/common/001239615.pdf
第一に、緑地保全・緑化推進法人(みどり法人)制度の拡充です。指定権者を知事から市区町村に変更し、指定対象にまちづくり会社等を追加することで、より地域に密着した緑地保全・緑化推進が可能となりました 。
第二に、市民緑地認定制度の創設です。まちづくり会社等の民間主体が、市区町村長による設置管理計画の認定を受け、オープンアクセスの市民緑地を設置・管理する制度が新たに創設されました 。これにより、民間の力を活用した緑地空間の創出が促進されています。
参考)https://www.mlit.go.jp/toshi/park/content/001419266.pdf
第三に、緑化地域制度の改正により、商業地域等の建ぺい率の高い地域における都市緑化の推進が図られました。緑化率の最低限度の基準が見直され、建ぺい率にかかわらず25%まで設定可能となり、屋上緑化等の普及が促進されています 。
都市緑地法に基づく緑地保全は、単なる景観の美化にとどまらず、住環境の向上や防災機能の強化において重要な役割を果たしています。特別緑地保全地区の指定要件の中でも、「遮断地帯、緩衝地帯又は避難地帯若しくは雨水貯留浸透地帯」として位置づけられているように、防災・減災機能が明確に評価されています 。
参考)https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/machizukuri-kankyo/midori-koen/midori_up/1mori/shitei/ryokuchihozen.html
近年の都市計画では、グリーンインフラストラクチャーの概念が注目されており、緑地を「地域課題の解決に向け、戦略的計画に基づき多様な機能が発揮される緑」として捉える視点が重要視されています 。雨水の貯留・浸透機能による浸水被害の軽減、ヒートアイランド現象の緩和、大気の浄化など、緑地が持つ多面的な機能が都市の持続可能性に寄与しています。
参考)https://www.posa.or.jp/wp/wp-content/uploads/2024/10/20241025_hokoku1_saikinnodokou.pdf
また、緑の基本計画の策定・改定においては、立地適正化計画との連携強化が図られており、都市全体の機能配置と緑地配置の整合性を保つことで、より効果的な都市環境の形成が目指されています 。住民の健全な生活環境の確保という観点からも、緑地の適切な配置と保全は不可欠な要素となっています。