
相続した空き家の売却で3000万円特別控除を受けるには、厳格な要件を満たす必要があります。対象となる「被相続人居住用家屋」は、相続開始の直前において被相続人が一人で居住していた家屋で、以下の3つの要件をすべて満たすものです。
📋 基本要件チェックリスト
特に注意すべきは、被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の取り扱いです。平成31年4月1日以降の譲渡から、一定の要件を満たせば老人ホーム入所者の住居も対象となりました。
国税庁の確定申告書作成コーナーでは詳細な要件確認が可能
https://www.keisan.nta.go.jp/r1yokuaru/cat2/cat21/cat218/tokurei/jobunjun/cid1108.html
譲渡所得の計算は、単純な売却価格ではなく「利益」に対して行われます。3000万円特別控除の適用により、売却による利益が3000万円以下であれば所得税や住民税が発生しません。
🧮 譲渡所得の計算式
譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用 - 特別控除(最大3000万円)
令和6年1月1日以降の譲渡では、相続人が3人以上の場合の特別控除額が2000万円に制限されます。これは空き家の共有相続が増加している現状を踏まえた改正です。
⚠️ 重要な制限事項
積水ハウスの税務解説では具体的な計算例を確認可能
https://www.sekisuihouse.co.jp/shm-keiei/asset_guide/tax_courses/vacanthouse_exception1/
確定申告では「被相続人居住用家屋等確認書」の取得が必須です。この書類は家屋所在地の市区町村で交付を受ける必要があり、確定申告書に添付して税務署に提出します。
📄 必要書類一覧
令和6年1月1日以降の譲渡では、売買契約に基づき譲渡後に耐震改修工事や取り壊しを行う場合も適用対象となりました。この場合、譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに工事完了が必要です。
🔍 意外な落とし穴
多くの人が見落とすのが、相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までという譲渡期限です。例えば、令和2年3月15日に相続が開始した場合、令和5年12月31日までに譲渡する必要があります。
横浜市の確認書交付手続きについて詳細情報
https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/sumai-kurashi/jutaku/sien/akiya/zeikoujo.html
空き家の3000万円特別控除は、他の税制優遇措置との併用に制限があります。特に相続税の「小規模宅地等の特例」との関係では、相続時に小規模宅地等の特例を適用した場合でも、空き家特別控除の適用は可能です。
🔄 他制度との選択適用
意外に知られていないのが、被相続人との共有物件の場合の取り扱いです。被相続人の持分のみが特例の対象となり、相続人の元々の持分は対象外となります。
💡 実務上の注意点
共同相続人が時期を違えて譲渡した場合、各人の譲渡対価の合計が1億円を超えると、後から譲渡した人は特例を受けられません。このため、共同相続の場合は譲渡時期の調整が重要です。
不動産業従事者として押さえておくべき実務上のポイントがあります。特に、耐震基準を満たさない建物の場合、売却前の耐震改修工事または取り壊しが原則必要でしたが、令和6年1月1日以降は買主による工事でも適用可能となりました。
🏗️ 耐震改修・取り壊しの選択肢
この改正により、買主にとって魅力的な物件として提案しやすくなりました。特に、建物の状態が悪く改修費用が高額な場合、買主による工事を前提とした売買契約の提案が有効です。
⚡ 営業上の活用ポイント
老人ホーム入所により空き家となった実家の相続案件では、平成31年4月1日以降の譲渡であれば特例適用の可能性があります。入所前の居住期間や入所理由の確認が重要です。
🎯 顧客への提案時の差別化要素
国土交通省の制度解説資料で最新情報を確認
https://www.mlit.go.jp/common/001396932.pdf
適用期間が令和9年12月31日まで延長されたことで、今後数年間は空き家売却の需要が継続すると予想されます。不動産業従事者にとって、この特例制度の正確な理解と顧客への適切な情報提供が、競合他社との差別化要因となるでしょう。