
働き方改革関連法は、正式名称を「働き方改革を推進するための関連法律の整備に関する法律」といい、2018年6月に成立し、2019年4月から順次施行されている労働関連法の改正パッケージです 。この法改正は、日本が直面する以下の重要な課題を解決するために制定されました :
参考)https://www.doracoon.net/navi/solutions/solutions-1852/
この法改正により、労働基準法、労働安全衛生法、パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法など8つの法律が大幅に改正され、多くの企業がその対応に追われることになりました 。
参考)https://moconavi.jp/blog/2023/06/7174/
時間外労働の上限規制は、働き方改革関連法の中でも最も重要な変更点の一つです 。改正前は法律上の残業時間の上限がなく、行政指導のみでしたが、改正後は法律で厳格に規制されるようになりました 。
参考)https://hatarakikatakaikaku.mhlw.go.jp/overtime.html
具体的な上限規制の内容は以下の通りです :
原則的な上限
特別条項での上限
月80時間は1日当たり約4時間程度の残業に相当し、原則である月45時間を超えることができるのは年間6か月までに制限されています 。これらの規制に違反した場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります 。
同一労働同一賃金は、働き方改革関連法の中核をなす制度の一つで、同じ労働をしている正社員と非正規社員には、雇用形態にかかわらず同額の賃金を支払うべきだとする原則です 。この制度は2020年4月に施行された「パートタイム・有期雇用労働法」や「労働者派遣法」で定められています 。
参考)https://xn--alg-li9dki71toh.com/roumu/work-style-reform/equal-pay-for-equal-work/
同一労働同一賃金の3つの主要な規定は以下の通りです :
対象となる労働者は、短時間労働者(週の所定労働時間が正社員より短い)、有期雇用労働者(契約期間に定めがある)、派遣労働者(派遣会社から派遣されている)です 。この制度により、基本給や賞与、手当、福利厚生などのあらゆる待遇について格差の是正が求められています 。
勤務間インターバル制度は、1日の勤務終了後から翌日の出社まで一定時間以上の休息時間を設けることで、働く方の生活時間や睡眠時間を確保する制度です 。労働時間等設定改善法の改正により、2019年4月1日から事業主の努力義務として導入されました 。
参考)https://www.ieyasu.co/media/what-is-the-interwork-interval-in-which-mandatory-deployment-is-considered/
厚生労働省は9時間〜11時間のインターバル時間設定を推奨しており、これは過労死認定基準が見直され、「勤務間インターバルがおおむね11時間未満」が労働時間以外の要因として追加されたことも背景にあります 。厚生労働省は令和7年までに導入企業の割合を15%以上にする目標を掲げています 。
参考)https://www.obc.co.jp/landing/workstyle/taisaku05/
制度導入時には就業規則に規定し、以下のいずれかの対応が必要です :
企業は自社で定めた休息時間の確保状況を把握し、確保できていない従業員への健康指導を実施するとともに、残業を抑制する指導が求められます 。
年次有給休暇の年5日取得義務化は、年休が10日以上付与される従業員に対し、年5日の年次有給休暇を確実に取得させることを使用者に義務付ける制度です 。この制度は2019年4月から施行され、すべての企業に適用されています 。
参考)https://hcm-jinjer.com/blog/kintai/paidleave_mandatory/
対象となるのは年間10日以上有給休暇が付与される従業員で、管理監督者や有期雇用労働者など雇用形態にかかわらず対象となります 。パートタイムやアルバイト社員でも、週の所定労働日数が4日の場合は3年6か月以上、3日の場合は5年6か月以上の勤務から対象となります 。
参考)https://jinjibu.jp/article/detl/moyamoya/2713/
使用者は以下の義務を負います :
労働者が自分の意思で5日以上の有給休暇を取得している場合は、会社側からさらに5日の有給休暇を取得させる義務はありません 。
参考)https://corporate.vbest.jp/columns/1402/
高度プロフェッショナル制度は、高度な専門知識を有し、年収1075万円以上を得る労働者を対象とする新しい労働制度です 。働き方改革関連法の施行により2019年4月に導入されました 。
参考)https://keiyaku-watch.jp/media/hourei/advanced-professional-system/
この制度の適用を受ける労働者は、使用者から具体的な指示を受けることなく裁量的に業務を行うことができ、労働時間・休憩・休日・深夜の割増賃金に関する規定が適用されないため、残業代は発生しなくなります 。
対象業務は限定的で、以下のような高度な専門業務に限られています :
参考)https://www.freee.co.jp/kb/kb-trend/high-professional-system/
制度導入には労使委員会の5分の4以上の決議が必要で、対象労働者本人の同意も必須となっています 。使用者には対象労働者の健康管理時間の把握や休日の確保、選択的措置(健康管理時間の上限設定、勤務間インターバルの確保等)が求められます 。
中小企業における月60時間を超える時間外労働の割増賃金率引き上げは、働き方改革関連法による重要な改正の一つで、2023年4月1日から適用されています 。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/000930914.pdf
改正前は大企業が50%、中小企業が25%と格差がありましたが、改正後は大企業・中小企業ともに50%に統一されました 。この引き上げにより、中小企業では月60時間を超える時間外労働について、従来の倍の割増賃金を支払う必要があります 。
参考)https://www.tis.amano.co.jp/hr_news/2627/
中小企業の判定基準は業種ごとに以下のように定められています :
この改正の背景には、企業の長時間労働を抑制し、働き方の質を改善する目的があります 。特に月60時間超の時間外労働が多い中小企業では、従来と同じ働き方を続けると残業代が大幅に増加するため、労働時間短縮への取り組みが必要になります 。
中小企業は2023年4月1日から労働させた時間について割増賃金の引き上げ対象となるため、就業規則や給与規定の見直し、労働時間管理体制の強化が急務となっています 。