働き方改革関連法とは?わかりやすく解説する9つのポイント

働き方改革関連法とは?わかりやすく解説する9つのポイント

働き方改革関連法について時間外労働の上限規制や同一労働同一賃金など、企業が知っておくべき重要なポイントを詳しく解説。法改正の影響はどのようなものでしょうか?

働き方改革関連法とはわかりやすく解説

働き方改革関連法の主要ポイント
時間外労働の上限規制

月45時間・年360時間を原則とし、特別条項でも年720時間以内に制限

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同一労働同一賃金

正社員と非正規社員の不合理な待遇格差を解消する制度

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勤務間インターバル制度

終業から翌日出勤まで9〜11時間の休息時間を確保する努力義務

働き方改革関連法の概要と背景

働き方改革関連法は、正式名称を「働き方改革を推進するための関連法律の整備に関する法律」といい、2018年6月に成立し、2019年4月から順次施行されている労働関連法の改正パッケージです 。この法改正は、日本が直面する以下の重要な課題を解決するために制定されました :
参考)https://www.doracoon.net/navi/solutions/solutions-1852/

 

  • 少子高齢化による労働人口の減少 - 生産年齢人口の減少に対応するため
  • 長時間労働・過労死問題の解決 - 働き方の質的改善を図るため
  • 正規・非正規雇用の待遇格差是正 - 公平な労働環境の実現のため
  • 有給取得率の改善 - ワークライフバランスの向上のため

この法改正により、労働基準法、労働安全衛生法、パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法など8つの法律が大幅に改正され、多くの企業がその対応に追われることになりました 。
参考)https://moconavi.jp/blog/2023/06/7174/

 

働き方改革関連法の時間外労働上限規制

時間外労働の上限規制は、働き方改革関連法の中でも最も重要な変更点の一つです 。改正前は法律上の残業時間の上限がなく、行政指導のみでしたが、改正後は法律で厳格に規制されるようになりました 。
参考)https://hatarakikatakaikaku.mhlw.go.jp/overtime.html

 

具体的な上限規制の内容は以下の通りです :
原則的な上限

  • 月45時間・年360時間が原則的な上限
  • この上限を超える残業は、特別な事情がない限り不可能

特別条項での上限

  • 年720時間以内(休日労働を含まず)
  • 月100時間未満(休日労働を含む)
  • 複数月平均80時間以内(2〜6か月平均、休日労働を含む)

月80時間は1日当たり約4時間程度の残業に相当し、原則である月45時間を超えることができるのは年間6か月までに制限されています 。これらの規制に違反した場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります 。

働き方改革関連法における同一労働同一賃金制度

同一労働同一賃金は、働き方改革関連法の中核をなす制度の一つで、同じ労働をしている正社員と非正規社員には、雇用形態にかかわらず同額の賃金を支払うべきだとする原則です 。この制度は2020年4月に施行された「パートタイム・有期雇用労働法」や「労働者派遣法」で定められています 。
参考)https://xn--alg-li9dki71toh.com/roumu/work-style-reform/equal-pay-for-equal-work/

 

同一労働同一賃金の3つの主要な規定は以下の通りです :

  • 不合理な待遇差の禁止 - 正社員と非正規社員の間で雇用形態による不合理な待遇差を禁止
  • 労働者の待遇に関する説明義務の強化 - 企業は労働者に対し待遇の内容や理由を説明する義務
  • 行政による指導と裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備 - 争いが生じた場合の解決手段を提供

対象となる労働者は、短時間労働者(週の所定労働時間が正社員より短い)、有期雇用労働者(契約期間に定めがある)、派遣労働者(派遣会社から派遣されている)です 。この制度により、基本給や賞与、手当、福利厚生などのあらゆる待遇について格差の是正が求められています 。

働き方改革関連法の勤務間インターバル制度導入

勤務間インターバル制度は、1日の勤務終了後から翌日の出社まで一定時間以上の休息時間を設けることで、働く方の生活時間や睡眠時間を確保する制度です 。労働時間等設定改善法の改正により、2019年4月1日から事業主の努力義務として導入されました 。
参考)https://www.ieyasu.co/media/what-is-the-interwork-interval-in-which-mandatory-deployment-is-considered/

 

厚生労働省は9時間〜11時間のインターバル時間設定を推奨しており、これは過労死認定基準が見直され、「勤務間インターバルがおおむね11時間未満」が労働時間以外の要因として追加されたことも背景にあります 。厚生労働省は令和7年までに導入企業の割合を15%以上にする目標を掲げています 。
参考)https://www.obc.co.jp/landing/workstyle/taisaku05/

 

制度導入時には就業規則に規定し、以下のいずれかの対応が必要です :

  • 始業時刻の繰り下げ - 前日の終業時刻により翌日の始業時刻を遅らせる
  • 一定時刻以降の残業禁止 - 特定の時刻以降の時間外労働を制限
  • 早出残業の制限 - 一定時刻以前の早出残業を禁止

企業は自社で定めた休息時間の確保状況を把握し、確保できていない従業員への健康指導を実施するとともに、残業を抑制する指導が求められます 。

働き方改革関連法の年5日有給休暇取得義務化

年次有給休暇の年5日取得義務化は、年休が10日以上付与される従業員に対し、年5日の年次有給休暇を確実に取得させることを使用者に義務付ける制度です 。この制度は2019年4月から施行され、すべての企業に適用されています 。
参考)https://hcm-jinjer.com/blog/kintai/paidleave_mandatory/

 

対象となるのは年間10日以上有給休暇が付与される従業員で、管理監督者や有期雇用労働者など雇用形態にかかわらず対象となります 。パートタイムやアルバイト社員でも、週の所定労働日数が4日の場合は3年6か月以上、3日の場合は5年6か月以上の勤務から対象となります 。
参考)https://jinjibu.jp/article/detl/moyamoya/2713/

 

使用者は以下の義務を負います :

  • 取得時季の指定 - 労働者が自主的に5日取得しない場合、使用者が時季を指定して取得させる
  • 年次有給休暇管理簿の作成 - 労働者ごとの有給休暇の取得状況を記録
  • 就業規則への記載 - 年次有給休暇の時季指定について就業規則に規定

労働者が自分の意思で5日以上の有給休暇を取得している場合は、会社側からさらに5日の有給休暇を取得させる義務はありません 。
参考)https://corporate.vbest.jp/columns/1402/

 

働き方改革関連法の高度プロフェッショナル制度創設

高度プロフェッショナル制度は、高度な専門知識を有し、年収1075万円以上を得る労働者を対象とする新しい労働制度です 。働き方改革関連法の施行により2019年4月に導入されました 。
参考)https://keiyaku-watch.jp/media/hourei/advanced-professional-system/

 

この制度の適用を受ける労働者は、使用者から具体的な指示を受けることなく裁量的に業務を行うことができ、労働時間・休憩・休日・深夜の割増賃金に関する規定が適用されないため、残業代は発生しなくなります 。
対象業務は限定的で、以下のような高度な専門業務に限られています :

  • 金融商品の開発業務 - 金融工学等の知識を用いた業務

    参考)https://www.freee.co.jp/kb/kb-trend/high-professional-system/

     

  • 金融商品のディーリング業務 - 相場等に関する高度な知識を要する業務
  • アナリスト業務 - 企業・市場等の高度な分析業務
  • コンサルタント業務 - 事業・業務の企画運営に関する高度な考案業務
  • 研究開発等の業務 - 技術・研究開発に関する高度な専門業務

制度導入には労使委員会の5分の4以上の決議が必要で、対象労働者本人の同意も必須となっています 。使用者には対象労働者の健康管理時間の把握や休日の確保、選択的措置(健康管理時間の上限設定、勤務間インターバルの確保等)が求められます 。

働き方改革関連法の中小企業割増賃金率引き上げ

中小企業における月60時間を超える時間外労働の割増賃金率引き上げは、働き方改革関連法による重要な改正の一つで、2023年4月1日から適用されています 。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/000930914.pdf

 

改正前は大企業が50%、中小企業が25%と格差がありましたが、改正後は大企業・中小企業ともに50%に統一されました 。この引き上げにより、中小企業では月60時間を超える時間外労働について、従来の倍の割増賃金を支払う必要があります 。
参考)https://www.tis.amano.co.jp/hr_news/2627/

 

中小企業の判定基準は業種ごとに以下のように定められています :

  • 小売業: 資本金5,000万円以下または従業員50人以下
  • サービス業: 資本金5,000万円以下または従業員100人以下
  • 卸売業: 資本金1億円以下または従業員100人以下
  • その他業種: 資本金3億円以下または従業員300人以下

この改正の背景には、企業の長時間労働を抑制し、働き方の質を改善する目的があります 。特に月60時間超の時間外労働が多い中小企業では、従来と同じ働き方を続けると残業代が大幅に増加するため、労働時間短縮への取り組みが必要になります 。
中小企業は2023年4月1日から労働させた時間について割増賃金の引き上げ対象となるため、就業規則や給与規定の見直し、労働時間管理体制の強化が急務となっています 。