
日本の環境法は、環境基本法を頂点とした体系的な法制度として構築されています 。環境基本法は1993年に制定され、環境保全について基本理念を定め、国・地方公共団体・事業者・国民の責務を明らかにする基本法として機能しています 。
参考)https://www.pref.aichi.jp/kankyo/kansei-ka/houreii/jyorei-1/houtaikei.pdf
この法律により、環境基準の設定、環境アセスメントの推進、環境保全のための経済的措置等が規定され、現在および将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的としています 。基本法は憲法と個別法の間をつなぐ役割を果たし、具体的施策は個別の法律、予算上の措置、行政上の実施要綱等により実行されます 。
参考)https://www.env.go.jp/earth/coop/coop/document/07-ttmncj/07-ttmncj-31.pdf
環境法は分野別に多数の個別法が制定されており、主要なものは以下のように分類されます 。
🌬️ 大気汚染分野
💧 水質汚濁・海洋汚染分野
🌍 土壌汚染・地盤沈下分野
これらの個別法は、環境基本法の基本理念に基づいて、具体的な規制や措置を定めています 。
参考)https://www.ea21.jp/inquiry/regulation/
化学物質管理については、複数の法律が連携して包括的な管理体制を構築しています 。化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)は、新規化学物質の事前審査制度を定め、既存化学物質についても安全性評価を実施しています 。
特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(化管法)は、PRTR制度により事業者による化学物質の排出・移動量の届出を義務付けています 。さらに、ダイオキシン類対策特別措置法やPCB廃棄物処理特別措置法など、特定の有害物質に対する個別の対策法も制定されています。
♻️ 廃棄物・リサイクル分野では、循環型社会形成推進基本法を基本として以下の法律が体系化されています。
生活環境の保全を目的とした法制度として、騒音、振動、悪臭に関する規制法が整備されています 。騒音規制法は、工場・事業場騒音、建設作業騒音、自動車騒音について規制基準を定め、都道府県知事や市町村長による規制地域の指定と基準値の設定を規定しています 。
振動規制法は、工場・事業場振動と建設作業振動を対象とし、騒音規制法と類似の規制体系を採用しています。悪臭防止法は、悪臭物質の濃度規制と臭気指数規制の2つの規制手法を設けており、地域の実情に応じた規制が可能となっています 。
これらの法律は、都市化の進展に伴う生活環境問題に対応するため、地方自治体の役割を重視した制度設計となっているのが特徴です。また、道路交通法との連携により、交通騒音・振動についても総合的な対策が図られています 。
地球環境問題への対応として、複数の法律が制定されています 。地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)は、京都議定書の国内実施法として1998年に制定され、国・地方公共団体・事業者・国民の温室効果ガス削減に向けた取組を規定しています 。
気候変動適応法は2018年に制定され、気候変動の影響による被害の回避・軽減を図る適応策を推進しています。フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(フロン排出抑制法)は、オゾン層破壊と地球温暖化の両方に影響するフロン類の規制を行っています 。
🌱 独自の視点として注目すべき分野は、環境教育・情報提供等の取組です。環境教育等による環境保全の取組の促進に関する法律は、環境保全活動の促進と環境教育の推進を目的としており、他の規制法とは異なる啓発・教育的アプローチを採用しています 。
また、環境影響評価法(環境アセスメント法)は、開発事業の計画段階から環境への影響を予測・評価し、適切な環境保全措置を講じることを求める予防的措置として、環境法制における重要な位置を占めています 。これらの法律は、従来の事後規制ではなく、事前予防の観点から環境保全を図る新しいアプローチを示しています。