
古都保存法(正式名称:古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法)は、昭和41年(1966年)に制定され、わが国固有の文化的資産として古都の歴史的風土を保存することを目的としています。
参考)https://iqrafudosan.com/channel/ancient-capitals-preservation-law-2
対象となる古都は以下の8市1町1村で、これらの地域では歴史的風土保存区域や歴史的風土特別保存地区の指定により、建築行為等に制限が設けられています:
参考)https://www.asukamura.jp/gyosei_asukaho_about_koto.html
これらの地域は、かつて政治や文化の中心地として歴史上重要な地位を占め、現在でも歴史的建造物や遺跡が周囲の自然環境と一体となって古都らしさを醸し出している地域です。
歴史的風土保存区域は、国土交通大臣が指定する区域で、歴史的風土を保存するために必要な土地として位置づけられています。この区域内では、以下の行為を行う際に府県知事(政令市では市長)への届出が義務付けられています:
参考)https://www.mlit.go.jp/common/001031124.pdf
届出が必要な行為
届出の例外
ただし、通常の管理行為、軽易な行為、非常災害のため必要な応急措置として行う行為については届出は不要とされています。
参考)https://t-andco.com/kotohozonhou/
重要なポイントは、歴史的風土保存区域では「届出制」であり、許可制ではないということです。これは後述する特別保存地区と比較して規制が緩やかであることを意味しています。
歴史的風土保存区域の中心をなす特に重要な地区は、歴史的風土特別保存地区に指定されます。この地区内では現状凍結的な保存を目的とした厳格な規制が設けられており、以下の行為には府県知事の許可が必要です:
許可が必要な行為
特別保存地区では、保存区域の届出制とは異なり、事前の許可が必要となるため、開発や建築に際してより慎重な検討が求められます。許可基準に適合しない場合は許可されないため、実質的に開発行為が制限される仕組みとなっています。
宅地建物取引業法第35条により、古都保存法の対象地域内の不動産取引では重要事項説明が義務付けられています。特に以下の点について詳細な説明が必要です:
説明が必要な事項
調査方法
不動産業者は、役所の窓口や国土交通省のホームページ、「古都保存法パンフレット」等により、対象物件の該当性を確認する必要があります。各自治体によって担当部署の名称は異なりますが、景観課、自然環境課、都市景観部風致保全課等が窓口となることが多いです。
宅建実務においては、これらの制限により建築計画に大きな影響を与える可能性があるため、購入希望者に対して十分な説明を行うことが重要です。
参考)https://kenchiku-hoki.com/ancient-city/
古都保存法では、厳格な制限を設ける一方で、土地所有者への配慮として様々な代償措置や優遇制度が設けられています。
土地の買入制度
歴史的風土特別保存地区内において、許可を受けることができず土地利用に支障をきたす場合、土地所有者は府県(政令市では市)に対して土地の買入を申し出ることができます。この場合、土地は時価で買い取られることになります。
税制上の優遇措置
特別保存地区に指定された土地には以下の税制優遇が適用されます。
これらの制度により、私有財産権の制約に対する補償が図られており、古都保存と土地所有者の権利保護のバランスが考慮されています。また、これらの優遇措置は都市計画法における地域地区制度の一環として位置づけられ、他の都市計画制限と連携した総合的な土地利用規制システムの一部となっています。