
砂防法は明治30年(1897年)に制定された、日本で最も歴史の長い土砂災害防止法の一つです 。正式名称は「砂防法」(明治30年法律第29号)で、土石流や山崩れなどの土砂災害から国民の生命や財産を守ることを目的としています 。
参考)https://iqrafudosan.com/channel/sand-control-law
この法律の最大の特徴は、危険性の高い土地を砂防指定地として指定し、土地の掘削や工作物の新築など一定の行為を制限することです 。砂防指定地の指定は国土交通大臣が行い、制限の詳細は都道府県の条例で定められています 。
参考)https://www.pref.aichi.jp/soshiki/sabo/0000021384.html
宅地建物取引業法では、砂防指定地内にある不動産を売買する際には、重要事項説明書にて砂防法に関する制限内容を説明することが義務付けられています 。これは購入者が土地利用の制限を事前に理解し、適切な判断を行うために不可欠な情報となっています。
参考)https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/tochi_fudousan_kensetsugyo_const_tk3_000001_00054.html
砂防法の根本的な目的は、自然の地形が生み出す土石流を防止することにあります 。日本は険しい山地と急流河川が多く、古くから土砂災害に悩まされてきた地理的特性を持っています 。
参考)https://fudousan-chiebukuro.com/kounyu-baikyaku/17438.html
砂防法では以下の3つの基本概念が定められています。
砂防法は土砂災害防止対策の中でもハード対策に重点を置いた法律として位置づけられています 。これは砂防ダムの建設や渓流改修など、物理的な構造物による対策を主軸とする特徴があります。
参考)https://www.daika-net.co.jp/column/p_2874.html
近年の気候変動により集中豪雨が頻発する中、砂防法の重要性はますます高まっています 。特に住宅地の山間部への拡大に伴い、砂防指定地内での適切な土地利用規制が重要な課題となっています。
参考)https://sell.yeay.jp/reading/knowledge/10108/
砂防指定地は、砂防法第2条に基づき国土交通大臣が指定する土地で、以下の2つの要件のいずれかを満たす必要があります :
砂防指定地の表示方法には4つの種類があり、地域の状況に応じて適切な方法が選択されます :
参考)https://www.pref.shiga.lg.jp/file/attachment/5426834.pdf
砂防指定地と混同されやすいのが土石流危険渓流です 。これは渓流の勾配が15度以上で土石流発生の危険性があり、人家や公共施設に被害を生じるおそれがある渓流を指定したものです。土石流危険渓流は警戒すべき場所の指定であり、砂防指定地とは法的な位置づけが異なります。
また、砂防法は砂防三法の一つとして位置づけられています 。砂防三法とは砂防法・地すべり等防止法・急傾斜地法の総称で、それぞれ土石流・地すべり・がけ崩れという3つの代表的な土砂災害に対応しています。
砂防指定地内では、都道府県知事の許可なく以下の行為を行うことができません :
参考)https://www.pref.aichi.jp/soshiki/sabo/0000021383.html
主な制限行為
ただし、以下の行為については許可が不要とされています :
許可申請を行う際は、所管する都道府県の土木事務所または砂防事務所に必要書類を提出します 。申請には以下の書類が一般的に必要とされます:
参考)https://www.pref.kochi.lg.jp/doc/2022041100370/
令和5年度より高知県では電子申請システムでの申請が可能となるなど、申請方法の電子化も進んでいます 。
許可の審査では、工事が治水上砂防に支障をきたさないか、土砂災害の危険性を高めないかという観点から厳格に検討されます。特に大規模な土地改変については、完了後の検査実施も義務付けられています 。
参考)https://www.pref.shizuoka.jp/machizukuri/kasensabo/1049360/1060668.html
不動産の売買において砂防指定地内にある物件を取り扱う場合、宅地建物取引士には重要事項説明が法的に義務付けられています 。
重要事項説明での注意点
砂防指定地の確認方法は以下の通りです :
愛知県では名古屋市の東区、北区、西区、中村区、中区、熱田区、中川区、港区、南区をはじめ、清須市、北名古屋市、西春日井郡豊山町など一部の市町村には砂防指定地が存在しません 。
砂防指定地内での住宅建築は原則として制限されていますが、都道府県知事の許可を得れば建築可能な場合があります 。ただし、許可要件は厳格で、安全性の確保が最優先とされています。
不動産業者は砂防指定地内の物件について、土地代が安価である反面、利用制限が厳しいという特性を顧客に十分説明する必要があります 。特に将来的な増改築や土地利用変更の可能性についても事前に説明しておくことが重要です。
砂防ダムは砂防法に基づく最も重要な砂防設備の一つで、土石流の流下を制御し下流域の安全を確保する役割を担っています 。
砂防ダムの主要機能
近年の砂防ダム技術では、従来のコンクリート構造に加えて鋼製砂防構造物の活用が進んでいます 。鋼製部材は工場製作により品質が均一で工期短縮が可能ですが、酸に弱いため火山地域以外での使用が推奨されています。
参考)https://jsece.or.jp/wp-content/uploads/2019/05/kakomonH27-29.pdf
また、透過型砂防ダムやスリット型砂防ダムなど、平常時の水流や生態系に配慮した構造も開発されています 。これらの技術は土砂のみを捕捉し、水や魚類の移動を阻害しない環境配慮型の設計となっています。
参考)https://www.stc.or.jp/activities/patent/
砂防施設の設計においては、年超過確率1/100程度の規模または既往最大雨量のうち大きい値による設計流量が採用されています 。掃流区域では一般的に10~30%の土砂混入率が考慮され、これを清水流量に乗じて設計流量が算出されます。
参考)https://www.cbr.mlit.go.jp/kawatomizu/sabou/shisetsu/sekkei_05.pdf
最新の技術特許動向では、土石流の数値シミュレーション手法、流下物捕捉構造体、透過型砂防ダムの天端保護工など、より高度で効率的な砂防技術の開発が活発に行われています 。これらの技術革新により、今後の砂防事業はより効果的で環境に優しいものへと発展していくことが期待されています。