下請法改正ポイントと企業対応の必須チェックリスト

下請法改正ポイントと企業対応の必須チェックリスト

2026年1月施行の下請法改正により「中小受託取引適正化法」として生まれ変わる新制度の改正ポイントと企業に求められる対応策を徹底解説します。従業員数基準の追加や手形支払い禁止など、知らないと重大な法令違反になるリスクとは?

下請法改正のポイントと企業の対応策

下請法改正の主要ポイント
📜
法律名・用語の変更

「下請代金支払遅延等防止法」から「中小受託取引適正化法」へ名称変更し、親事業者・下請事業者から委託事業者・中小受託事業者への用語変更

🏢
適用範囲の大幅拡大

従業員数基準の新設により資本金300万円未満でも従業員300人超の企業が対象に。運送委託も新たに規制対象に追加

💰
支払方法の厳格化

手形支払いの原則禁止と価格協議義務の新設により、従来の商慣習から大きく転換

下請法改正による法律名称と用語の変更内容

2026年1月1日から施行される下請法改正により、正式名称が「下請代金支払遅延等防止法」から「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」に変更されます 。略称も「中小受託法」や「取適法」として使用される予定です 。
参考)https://www.businesslawyers.jp/articles/1471

 

これに伴い、従来の「親事業者」は「委託事業者」に、「下請事業者」は「中小受託事業者」に名称が変更されます 。この変更は単なる用語の置き換えではなく、下請取引の実態をより適切に表現し、対等なパートナーシップを重視する姿勢を示すものです 。
参考)https://www.fmclub.jp/blog/risk/90

 

企業は社内の契約書式や発注書、規程類において、これらの新しい用語に統一する必要があります 。従来の「親事業者」「下請事業者」の表記を継続使用した場合、法改正への対応が不十分と判断されるリスクがあります。
参考)https://biz.moneyforward.com/contract/basic/23279/

 

下請法改正における従業員数基準の適用範囲拡大

改正下請法では、従来の資本金基準に加えて新たに「従業員数基準」が導入されます 。製造委託等においては、委託側が従業員数300人超、中小受託側が従業員300人以下(個人を含む)の場合に適用されます 。役務提供委託では、委託側が従業員数100人超、中小受託側が従業員数100人以下の場合が対象となります 。
参考)https://www.tkilaw.com/8755

 

この変更により、これまで資本金基準を満たさずに下請法の適用を受けなかった事業者も、従業員数によって新たに規制対象となる可能性があります 。特に、コロナ禍で減資を行い優遇税制を受ける企業や、取引先に増資させて適用を逃れていた企業への対策として導入されました 。
参考)https://www.corporate-legal.jp/news/5953

 

従業員数の算定には正社員だけでなく、パートタイマーや契約社員も含まれるため、企業は自社の従業員数を正確に把握し、適用対象かどうかを確認する必要があります 。
参考)https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/kaiseihou_setsumeikai.html

 

下請法改正による手形支払い禁止と支払方法の厳格化

改正下請法では、対象取引における手形払いが原則禁止されます 。これまでサイト(支払期日)が60日以内であれば許容されていた手形支払いも、改正後は一切禁止となります 。電子記録債権やファクタリング等についても、支払期日までに代金相当額を得ることが困難なものは禁止対象となります 。
参考)https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2025/may/250516_toritekiseiritsu.html
youtube
この変更により、企業は現金振込や口座振替など、確実に代金を受け取れる支払方法への転換が必要です 。手形に依存していた支払慣行を持つ企業は、資金調達方法や支払スケジュールの見直しが急務となります。
違反した場合は勧告の対象となり、企業名の公表や取引先からの信頼失墜につながるリスクがあります 。そのため、2026年1月の施行前に支払方法の見直しと社内システムの整備を完了させる必要があります。

下請法改正による価格協議義務と据え置き取引への対応

改正下請法では、価格に関する協議に応じないことや、協議において必要な説明・情報提供をしないことによる一方的な代金額決定が新たに禁止されます 。これは長期間にわたる価格据え置き取引への対策として導入されたものです 。
参考)https://www.businesslawyers.jp/seminars/487

 

具体的には、労務費や原材料価格、エネルギーコストの上昇分を取引価格に反映させる必要性について、価格交渉の場で明示的に協議することが求められます 。春季労使交渉の結果や最低賃金などで労務費の増加が明確な場合、価格が据え置かれた取引は下請法違反となる可能性があります 。
参考)https://www.jftc.go.jp/regional_office/chubu/chubu_tidbits/no0011.html

 

企業は価格改定条項や協議手続きを契約書に明示し、交渉過程を適切に記録・保存することが重要です 。価格協議の要請があった場合は誠実に対応し、合理的な理由なく拒否することは避けなければなりません 。
参考)https://biz.moneyforward.com/contract/basic/22241/

 

下請法改正による特定運送委託の追加と物流業界への影響

改正下請法では、新たに「特定運送委託」が規制対象に追加されます 。これは荷主企業が運送業者に商品配送を委託する取引で、取引対象物を顧客に届けることを目的とした配送が該当します 。
参考)https://biz.moneyforward.com/contract/basic/23241/

 

従来は物流・運送業界への下請法適用は限定的でしたが、改正により荷主企業(委託事業者)は運送業者(中小受託事業者)に対して契約条件の明示、支払期日の設定、代金の速やかな支払いなどの義務を負うことになります 。
ただし、自社内の物流、工場間や倉庫間での在庫移送など内部の物品移動については「顧客への運送」に該当せず、規制対象外となります 。物流業界では書面交付義務や60日以内の代金支払い義務への対応が新たに必要となり、業界慣行の見直しが求められます 。
参考)https://www.jftc.go.jp/file/toriteki002.pdf