
裁判所から債権差押命令が送達された場合、会社は即座に当該従業員への給与支払いを停止しなければなりません。この命令書には、差押債権目録と当事者目録が記載されており、これらの内容を詳細に確認する必要があります。
誤って従業員に全額を支払ってしまった場合、会社はその支払いを差押債権者に対抗できません。債権者から取立てを受けた際、拒否することができず、会社が二重払いのリスクを負うことになります。
対応の重要なポイント。
従業員本人の同意を得ずに給料の一部を控除することについて、労働基準法との関係で疑問を持つ経営者もいますが、差押えは民事執行法に基づく法律行為であるため、従業員本人の同意なく控除しても問題ありません。
給料の差し押さえには法的な上限が設けられており、生活維持のため全額差押えは禁止されています。民事執行法第152条により、以下の計算方法で差押可能金額を算出します:
一般的な債権の場合(養育費・婚姻費用以外)
養育費・婚姻費用の場合
手取り額の計算には、基本給と諸手当から所得税、住民税、社会保険料を控除した金額を使用しますが、通勤手当は含めません。
計算手順。
会社は正確に計算を行い、債権者と従業員の双方に対して正しい金額を支払う必要があります。計算ミスは後のトラブルの原因となるため、専門家に相談することも重要です。
債権差押命令には通常、陳述書が同封されており、会社は2週間以内に必要事項を記載して裁判所および債権者に返送する必要があります。この陳述書提出は法的義務であり、怠った場合は重大な責任を負います。
陳述書に記載すべき主な内容。
意図的に陳述をしなかった場合や失念した場合、差押債権者に損害が発生するとその賠償義務を負うことがあります。このため、担当者を明確にして確実に処理することが重要です。
注意すべき点として、債権者に支払う前に取立権の発生時期を確認する必要があります。養育費や婚姻費用等の扶養義務に関する債権の場合は1週間、それ以外の場合は4週間経過していることが必要です。
複数の債権差押命令が届いた場合は、供託が義務となります。この場合、差押債権者に直接支払うのではなく、法務局(供託所)に供託しなければなりません。
給与の差し押さえが発生した場合、会社が従業員本人に連絡を行うのが一般的ですが、法律上の明確な義務はありません。しかし、重要な給与変更があるため、従業員本人に内容を説明するのが通常の対応となっています。
通知方法は企業の判断により様々な対応が採用されています。
プライバシーの保護も重要な課題です。差し押さえは個人的な事情によるものですが、情報の取り扱いを誤ると周囲に知られてしまう恐れがあります。職場での噂やプライバシー侵害につながる可能性もあるため、会社では情報を最小限の担当者のみに共有し、慎重に扱う必要があります。
社内での情報管理における注意点。
従業員への説明では、なぜ給与から控除されるのか、今後の手続きについて丁寧に説明することが重要です。また、従業員が困窮している場合は、差押え額の減額申立てなどの法的手続きについて情報提供することも会社の配慮として考えられます。
給料差し押さえへの対応を怠った場合、会社は深刻なリスクに直面します。裁判所からの差押えに従わないと、会社が損害賠償請求を受ける可能性があります。このため、適切な対応手順の確立と専門知識の蓄積が不可欠です。
会社が負うリスクの種類。
振込手数料については、会社が負担する必要はなく、手数料は差押債権者負担で問題ありません。しかし、振込先の確認や取立権発生の確認など、細かな事務処理において専門的な知識が求められます。
不動産業界においては、従業員の個人的な金銭問題が業務に与える影響も考慮する必要があります。特に顧客との信頼関係が重要な業界において、従業員の経済状況が会社の信用に影響を与える可能性もあります。
効果的なリスク管理策。
また、給与計算システムの改修や、差押え対応に関する事務フローの確立も重要な課題となります。これらの対応により、適切かつ迅速な処理が可能となり、法的リスクを最小限に抑えることができます。
厚生労働省の労働基準法に関する詳細な解説
裁判所公式サイトの民事執行手続きに関する情報