
収用委員会は土地収用法に基づいて各都道府県に設置されている行政委員会です。知事から独立した公正中立な立場で、土地収用に関する審理や調査を行い、裁決を下す重要な権限を持っています。
委員構成は7人となっており、これは他の委員会と混同しやすいポイントとして宅建試験でも頻出です。注目すべきは、不動産鑑定士の人数要件などは特に定められていないことです。ただし、収用委員会が鑑定人に鑑定させる場合は、少なくとも1人は不動産鑑定士でなければならないという規定があります。
収用委員会は審理・調査のために以下の権限を有しています。
これらの権限により、公正で客観的な判断を下すための情報収集と審理が可能となっています。
事業認定の告示があった後の起業地については、重要な制限が課せられます。この制限内容を正確に理解することは、宅建業者にとって不可欠な知識です。
都道府県知事の許可が必要な行為
事業認定後の起業地では、明らかに事業に支障を及ぼすような土地の形質変更をする際に都道府県知事の許可が必要となります。この規定は「何人も」を対象としているため、土地の所有者であっても勝手な行為はできません。
許可が必要な具体的な行為例。
起業者の同意は不要
注意すべき点として、この許可は都道府県知事が単独で判断するものであり、起業者の同意は不要です。これは行政の迅速な判断を可能にするための制度設計となっています。
調査方法と重要事項説明での対応
事業認定の告示を受けた起業地については、以下の方法で調査できます。
調査の結果、売買対象不動産が事業認定後の起業地に該当する場合は、重要事項説明書の「土地収用法」の項目にチェックを付け、制限内容を詳しく説明する必要があります。
収用委員会における裁決手続きは、権利取得裁決と明渡裁決の2つに分かれており、それぞれ異なる目的と効果を持っています。
権利取得裁決の流れ
権利取得裁決は土地の所有権などを取得するための手続きです。裁決される主な事項は以下の通りです。
権利取得裁決により、起業者は権利取得の時期までに補償金を支払い、土地の所有権を取得します。
明渡裁決の特徴
明渡裁決は建物などの物件を事業計画場所から撤去して土地の引渡しを義務付ける手続きです。重要な点として、明渡裁決は起業者、土地所有者、関係人の申立てによって行われることです。
明渡裁決の裁決事項。
手続きの時間的制約
起業者は事業認定の告示があった日から4年を経過するまでの間に明渡裁決の申立てをしなければなりません。この期限を過ぎると、すでに得ている権利取得裁決も取り消されたものとみなされる重要な規定があります。
審理における和解制度
収用委員会は審理途中において企業者・土地所有者等に和解を勧めることができます。この和解はいつでも可能ですが、協議の確認は告示日から収用・使用の裁決申請前までとなっています。
土地収用における補償制度は、正当な補償を前提として収用を認める土地収用法の根幹をなす制度です。宅建業者として顧客に正確な情報を提供するため、補償制度の詳細を理解することが重要です。
土地に関する補償の種類
補償は大きく「土地に関する補償」と「明渡しに関する補償」に分けられます。
土地補償の基準日と算定方法。
都市計画事業の特殊な取扱い。
都市計画事業では事業認可の告示日が事業認定の告示日とみなされます。また、裁決申請をしないまま1年を経過すると、自動的に1年後のその時点が事業認定の告示日とみなされる特殊な制度があります。
権利消滅補償と残地補償
収用により借地権などの所有権以外の権利は消滅するため、その権利に対する額が補償されます。権利の取引価格や契約内容、収益性などを考慮して算定されます。
残地補償は土地の一部が収用された場合に重要となります。
替地による補償の限定的適用
原則として金銭による補償ですが、以下の特別な事情がある場合に限り替地による補償が認められます。
この替地による補償は非常に限定的であり、ほとんどの場合は金銭補償となることを顧客に説明する必要があります。
宅建業者として最も重要なのは、重要事項説明書での土地収用法に関する正確な記載と説明です。この部分は法的義務であり、誤りがあった場合は重大な責任問題となります。
重要事項説明が必要な物件の特定
土地収用法について重要事項説明が必要となるのは「事業認定後の起業地」です。以下の手順で確認を行います。
調査手順。
説明すべき具体的内容
重要事項説明では以下の内容を明確に説明する必要があります。
実務上の注意点とリスク回避
宅建業者が見落としがちな重要なポイント。
顧客への適切な説明方法
顧客に対しては法的な専門用語を避けて、以下のような分かりやすい表現で説明することが重要です。
「この土地は公共事業のために必要な土地として指定されており、建物を建てたり土地を改造したりする際には都道府県の許可が必要になります。また、将来的に公共事業のため土地を手放していただく可能性があります。その場合は適正な補償が行われます。」
このような説明により、顧客の理解を促進し、後々のトラブルを防止することができます。重要事項説明は単なる法的義務ではなく、顧客の財産を守るための重要な手続きであることを常に意識して対応することが大切です。