地価税課税対象の基礎控除と非課税土地の判定基準

地価税課税対象の基礎控除と非課税土地の判定基準

地価税の課税対象となる土地の判定基準や基礎控除額、非課税となる土地の種類について詳しく解説します。不動産従事者が知っておくべき地価税の仕組みを理解できるでしょうか?

地価税課税対象の基本構造

地価税課税対象の基本構造
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課税対象の土地等

1月1日時点で所有する国内の土地・借地権等が対象

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基礎控除制度

個人15億円、中小法人8-15億円、大法人5億円の控除

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非課税土地

公共用地・公益用地・1,000㎡以下の居住用地等

地価税の課税対象となる土地等の範囲

地価税は、個人または法人が課税時期である1月1日午前零時において保有している国内の土地等を対象として課税される税金です。この「土地等」には、土地の所有権だけでなく、借地権地上権などの土地に関する権利も含まれます。

 

課税対象となる土地等の具体的な範囲は以下の通りです。

  • 土地の所有権:宅地、田畑、山林、原野、牧場、池沼など
  • 借地権等:借地権、地上権、永小作権賃借権など
  • 区分所有建物の敷地利用権:マンション等の敷地に対する権利

重要なポイントとして、地価税は土地の「保有」に対して課税される保有税であり、売買や取得時に課税される取得税とは性質が異なります。また、課税価格の算定には相続税評価額の算出方法が用いられ、路線価などを基準として評価されます。

 

地価税の基礎控除額と課税価格の計算方法

地価税には高額な基礎控除が設けられており、この控除額を超える土地等を保有している場合のみ課税対象となります。基礎控除額は納税義務者の区分によって以下のように定められています。
個人および中小法人

  • 個人:15億円
  • 資本金1億円以下の法人:15億円
  • 資本金1億円超10億円以下の法人:8億円(1997年改正後)

大法人

  • 資本金10億円超の法人:5億円(1997年改正後)

基礎控除の計算には、定額控除と面積比例控除の選択制が採用されています。面積比例控除は「1平方メートル当たり3万円×土地面積」で計算され、定額控除と比較していずれか多い方を選択できます。

 

課税価格の計算式は以下の通りです。
地価税額 = (課税価格 - 基礎控除額) × 税率
税率は導入当初0.3%でしたが、1996年の改正により0.15%に引き下げられました。

 

地価税の非課税土地の種類と判定基準

地価税には多くの非課税規定が設けられており、公共性の高い土地や一定の条件を満たす土地については課税対象から除外されます。

 

公共用地・公益用地

  • 国・地方公共団体が所有する土地
  • 公共の用に供する道路、公園、河川敷地
  • 学校法人、宗教法人、社会福祉法人等が公益事業に使用する土地

居住用地の非課税措置

  • 1,000平方メートル以下の居住用地
  • 住宅の敷地として使用されている土地のうち、1戸当たり1,000㎡までの部分

その他の非課税土地

  • 墓地、霊園として使用されている土地
  • 1平方メートル当たりの価額が3万円以下の土地
  • 農業用施設の敷地(一定の条件下)

これらの非課税規定により、実際に地価税の課税対象となるのは主に事業用地や投資用不動産、大規模な居住用地などに限定されていました。

 

地価税の課税停止と将来的な復活可能性

地価税は1998年度から課税が停止されており、現在も申告・納付の必要がない状態が続いています。この課税停止は「臨時緊急的な措置として、当分の間」とされており、完全な廃止ではありません。

 

課税停止の背景

  • 長期にわたる地価の下落
  • バブル崩壊後の経済情勢の変化
  • 土地取引の低迷
  • 企業収益の悪化

将来的な復活の可能性
地価税法は現在も存続しており、経済情勢や地価動向の変化によっては課税が再開される可能性があります。特に以下の状況では復活が検討される可能性があります。

  • 地価の大幅な上昇が継続的に発生した場合
  • 土地投機的な取引が活発化した場合
  • 税収確保の必要性が高まった場合

不動産従事者としては、地価税の制度内容を理解しておくことで、将来的な課税再開に備えることができます。

 

地価税課税対象の実務上の注意点と評価方法

地価税の課税対象となる土地等の評価は、相続税評価額の算定方法に準拠して行われます。この評価方法には実務上重要なポイントがいくつかあります。

 

評価方法の特徴

  • 路線価方式:市街地の宅地について、路線価に面積を乗じて算定
  • 倍率方式:路線価の定められていない地域で、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて算定
  • 更地価額:建物等がないものとして評価

実務上の注意点
地価税の課税対象判定において、不動産従事者が特に注意すべき点は以下の通りです。

  • 所有権の確認:1月1日時点での所有権者の確定が重要
  • 借地権等の取扱い:借地権者も納税義務者となる可能性
  • 共有持分の処理:共有土地の場合、持分に応じて課税対象を判定
  • 信託財産の取扱い:信託の受益者が実質的な所有者として課税対象

意外な課税対象
一般的にはあまり知られていませんが、以下のような土地等も課税対象となる可能性があります。

  • 工場の敷地内にある従業員駐車場(事業用地として評価)
  • 賃貸マンションの敷地(投資用不動産として評価)
  • ゴルフ場の用地(事業用地として高額評価される場合)
  • 資材置き場や倉庫用地(事業用地として評価)

これらの土地は居住用地の非課税措置の対象外となるため、基礎控除額を超える場合には課税対象となります。

 

評価額の算定における特殊事情
地価税の評価においては、以下のような特殊事情も考慮されます。

  • 利用制限都市計画法等による利用制限がある場合の減額
  • 形状:不整形地や間口の狭い土地の減額
  • 環境:騒音、振動等の環境悪化による減額
  • 権利関係:借地権等が設定されている場合の調整

これらの要因により、実際の課税価格は単純な路線価計算とは異なる場合があります。

 

地価税の課税対象に関する理解は、不動産の取引や保有において重要な知識となります。現在は課税停止中ですが、制度の仕組みを理解しておくことで、将来的な課税再開時にも適切に対応できるでしょう。

 

国税庁の地価税に関する詳細な取扱通達について。
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sonota/911218/01.htm
地価税法の条文と基本的な仕組みについて。
https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000069