
地価税は、個人または法人が課税時期である1月1日午前零時において保有している国内の土地等を対象として課税される税金です。この「土地等」には、土地の所有権だけでなく、借地権や地上権などの土地に関する権利も含まれます。
課税対象となる土地等の具体的な範囲は以下の通りです。
重要なポイントとして、地価税は土地の「保有」に対して課税される保有税であり、売買や取得時に課税される取得税とは性質が異なります。また、課税価格の算定には相続税評価額の算出方法が用いられ、路線価などを基準として評価されます。
地価税には高額な基礎控除が設けられており、この控除額を超える土地等を保有している場合のみ課税対象となります。基礎控除額は納税義務者の区分によって以下のように定められています。
個人および中小法人
大法人
基礎控除の計算には、定額控除と面積比例控除の選択制が採用されています。面積比例控除は「1平方メートル当たり3万円×土地面積」で計算され、定額控除と比較していずれか多い方を選択できます。
課税価格の計算式は以下の通りです。
地価税額 = (課税価格 - 基礎控除額) × 税率
税率は導入当初0.3%でしたが、1996年の改正により0.15%に引き下げられました。
地価税には多くの非課税規定が設けられており、公共性の高い土地や一定の条件を満たす土地については課税対象から除外されます。
公共用地・公益用地
居住用地の非課税措置
その他の非課税土地
これらの非課税規定により、実際に地価税の課税対象となるのは主に事業用地や投資用不動産、大規模な居住用地などに限定されていました。
地価税は1998年度から課税が停止されており、現在も申告・納付の必要がない状態が続いています。この課税停止は「臨時緊急的な措置として、当分の間」とされており、完全な廃止ではありません。
課税停止の背景
将来的な復活の可能性
地価税法は現在も存続しており、経済情勢や地価動向の変化によっては課税が再開される可能性があります。特に以下の状況では復活が検討される可能性があります。
不動産従事者としては、地価税の制度内容を理解しておくことで、将来的な課税再開に備えることができます。
地価税の課税対象となる土地等の評価は、相続税評価額の算定方法に準拠して行われます。この評価方法には実務上重要なポイントがいくつかあります。
評価方法の特徴
実務上の注意点
地価税の課税対象判定において、不動産従事者が特に注意すべき点は以下の通りです。
意外な課税対象
一般的にはあまり知られていませんが、以下のような土地等も課税対象となる可能性があります。
これらの土地は居住用地の非課税措置の対象外となるため、基礎控除額を超える場合には課税対象となります。
評価額の算定における特殊事情
地価税の評価においては、以下のような特殊事情も考慮されます。
これらの要因により、実際の課税価格は単純な路線価計算とは異なる場合があります。
地価税の課税対象に関する理解は、不動産の取引や保有において重要な知識となります。現在は課税停止中ですが、制度の仕組みを理解しておくことで、将来的な課税再開時にも適切に対応できるでしょう。
国税庁の地価税に関する詳細な取扱通達について。
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sonota/911218/01.htm
地価税法の条文と基本的な仕組みについて。
https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000069