ホームエレベーター規格の基本要件と安全基準設計指針

ホームエレベーター規格の基本要件と安全基準設計指針

建築業従事者必見のホームエレベーター規格について、建築基準法の要件から設計・施工の重要ポイントまで詳しく解説します。安全性と法令遵守のための実務知識を習得しませんか?

ホームエレベーター規格基準詳細

ホームエレベーター規格の重要ポイント
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基本規格要件

建築基準法による構造要件と安全基準の詳細

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設計規格

昇降路寸法とカゴの規格要件

⚙️
技術規格

巻上機や安全装置の規格基準

ホームエレベーター規格の法的基準と建築確認要件

ホームエレベーターは建築基準法施行令第129条の3第2項第1号により特殊な構造または使用形態のエレベーターとして規定されています。従来の建築基準法では昇降行程10m以下、カゴの床面積1.1平方メートル以下という制限がありましたが、2015年12月の法改正により規格が緩和されました。
現在の法規制要件:

  • 昇降行程:制限なし(従来は10m以下)
  • カゴ床面積:1.3平方メートル以下(従来は1.1平方メートル以下)
  • 積載荷重:200キログラム以下(2~3人乗り)
  • 昇降速度:毎分20メートルが一般的

建築確認申請については設備としての届出が必要です。特に既存建築物への後付け設置の場合、建築基準法第87条の4により建築確認等の手続きが不要とされるケースがあります。令和7年4月1日施行の改正法では、延べ面積200~500㎡の2階建て木造建築物等への後付け設置について手続きの簡素化が図られています。
🚨 重要な注意点
床面積を1.1平方メートルより大きくする場合は過荷重検知装置の設置が義務付けられており、これは安全性確保のための重要な規格要件となっています。

ホームエレベーター規格の寸法基準と空間要件

ホームエレベーターの寸法規格は定員数と建物構造により細かく設定されています。建築基準法では最大3人乗りまでに制限されているため、実用的な設計では2人乗りまたは3人乗りタイプが選択されます。
カゴ寸法の規格基準:

定員 カゴ幅 カゴ奥行 用途
2人乗り 650~750mm 650~1,200mm 一般的な住宅用
3人乗り 950mm 1,200~1,400mm 車椅子対応

車椅子利用を想定する場合、一般的な車椅子サイズ(幅70cm×奥行90~110cm)を考慮し、3人乗りタイプの選択が必要です。さらに、エレベーター内では車椅子の向きを変更できないため、乗り場での回転スペースの確保も重要な設計要件となります。
昇降路の最小内法寸法(Panasonic規格例):

  • 2人乗り(一方向出入口):幅1,350mm × 奥行1,375mm
  • 出入口幅:800mm(標準)、1,000mm(車椅子対応)
  • 建物構造別昇降路寸法。
  • 木造:厚み分を考慮した追加寸法
  • 鉄骨造:標準寸法
  • RC造:型枠厚み分を考慮

昇降行程10m以下と10m超では昇降路の奥行寸法要件が異なり、10m超の場合はより大きな奥行寸法が必要となります。

ホームエレベーター規格の技術基準と安全装置要件

ホームエレベーターは一般用エレベーターと比較して緩和された技術規格が適用されますが、安全性は十分に確保されています。これは家庭での使用により使用頻度が低く、使用者が限定されることを考慮した規格設計となっています。
主要技術規格の緩和規定:

項目 ホームエレベーター規格 一般用エレベーター規格
主索直径 8mm以上 10mm以上
綱車D/d比 30以上 40以上
かご床荷重 1,800N/㎡以上 3,600N/㎡以上
過荷重検出装置 条件付き不要 設置要

主索端部の接続方法についても、バビット詰めや楔式に加え、据え込み式、クリップ止め、ケミカルソケット等の多様な方法が認められています。
🔧 技術的な独自視点
米国ASME規格との比較では、日本の建築基準法は昇降路囲いについて76mm球の通過規定がない点で異なります。これは日本の住宅環境と安全基準の考え方の違いを反映した独自の規格要件といえます。
安全装置については、定期的な保守点検の実施が推奨されており、特に家庭用の特性を活かした適切な維持管理体制の構築が重要です。

ホームエレベーター規格の設置対象建物と適用範囲

ホームエレベーターの設置が可能な建物は建築基準法により明確に規定されており、「個人の住戸内のみを昇降する」という用途制限が設けられています。これは一般的なエレベーターとは異なる特殊な使用形態として位置づけられているためです。
設置可能建物の規格要件:

  • 一戸建て住宅
  • 長屋住宅
  • 共同住宅の1住戸内
  • 店舗付き住宅(住戸部分のみ)

この規格により、マンション等の共用部分への設置や複数住戸にまたがる設置は認められません。また、店舗付き住宅の場合でも店舗部分への乗り入れは規格外となります。

 

🏗️ 実務上の重要ポイント
既存建築物への後付け設置の場合、構造的な検討が特に重要となります。木造建築では荷重伝達経路の確保、RC造では開口部の補強検討が必要です。また、昇降路の防火区画としての性能確保も設計時に考慮すべき規格要件です。

 

設置後は安全確保のため定期保守点検の実施が推奨されており、これは法的義務ではありませんが、安全な運用のための重要な管理要件となっています。特に家庭用の特性を考慮した点検頻度と内容の設定が実務上のポイントです。

ホームエレベーター規格の国際基準比較と今後の動向

日本のホームエレベーター規格は、国際的には米国ASME規格との比較で独自の特徴を持っています。欧州には統一的なホームエレベーター規格が存在しないため、ASME A17.1 Part5(2007年版)が主要な国際参考基準となっています。
日米規格の主要相違点:

  • 昇降路囲い:ASME規格では76mm球の通過禁止規定あり、日本にはこの明確な規定なし
  • 構造基準:ASME規格は一般乗用エレベーター規格を広く準用
  • 既存建築物対応:ASMEでは2008年にASME A17.3 Xで既存建築物用基準を策定

📊 規格改正の動向分析
日本では2015年の大幅緩和以降、さらなる規格見直しが検討されています。特に高齢化社会への対応として。

  • 昇降行程制限の完全撤廃(実現済み)
  • カゴ床面積の段階的拡大(1.3㎡まで拡大済み)
  • 車椅子対応基準の強化検討
  • IoT技術を活用した遠隔監視システムの規格化検討

令和6年国土交通省告示第1148号では、人が危害を受けるおそれの少ないエレベーターの定義が具体化され、今後の規格体系整備の方向性が示されています。
⚡ 技術革新と規格対応
近年のIoT技術進展により、遠隔での状態監視や予防保全システムの導入が進んでいます。これらの新技術に対応した規格整備が今後の重要な課題となっており、安全性向上と利便性確保の両立が求められています。

 

建築業従事者としては、これらの規格動向を把握し、設計・施工・保守の各段階で適切な対応を行うことが、高品質なホームエレベーター設置の実現に不可欠です。