
2025年3月7日に閣議決定されたマイナンバー法改正案は、デジタル社会の実現に向けた重点計画に基づいて制定されました 。この改正により、これまで社会保障・税・災害対策の3分野に限定されていたマイナンバーの利用範囲が、44の国家資格等の事務を含む新たな分野に拡大されます 。
参考)https://www.digital.go.jp/news/5d280978-bf16-4441-bb06-a5a285f329de
改正の主要な目的は、行政事務の効率化と国民の利便性向上にあります。マイナンバーの利用拡大により、申請時の添付書類の省略が可能となり、従来の紙ベースの手続きからオンライン申請への移行が促進されます 。
参考)https://www.digital.go.jp/laws/7b1e0007-1051-42fc-b079-b80621e67eac
この法改正は公布の日から起算して1年3か月以内の政令で定める日に施行される予定で、実際の運用開始は2025年度以降順次開始されることになります 。
参考)https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA1496H0U5A510C2000000/
宅地建物取引士は今回の改正で新たにマイナンバー利用可能事務の対象となった44資格の一つです 。これにより、宅建士の登録申請や住所変更、更新手続きなどがオンラインで実施できるようになります。
参考)https://www.taro.org/2025/02/%E4%BB%8A%E5%9B%BD%E4%BC%9A%E6%8F%90%E5%87%BA%E3%81%AE%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%8A%E3%83%B3%E3%83%90%E3%83%BC%E6%B3%95%E6%94%B9%E6%AD%A3%E6%A1%88%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8A%E5%BA%83%E3%81%8C%E3%82%8B.php
具体的なメリット:
現在は介護福祉士など7資格のみでマイナ申請が可能でしたが、準備が整い次第、宅建士を含む新たな対象資格での利用が開始される予定です 。宅建士登録者数は全国で約120万人と推定されており、この規模での制度変更は不動産業界に大きなインパクトをもたらします 。
参考)https://x.com/fdk_tsushin/status/1903042334146822250
2024年12月2日施行の法改正により、不動産登記事務の本人確認手続きが既に変更されています 。健康保険証の廃止に伴い、新たな「資格確認書」が導入され、マイナンバーカードによる本人確認の重要性が高まっています。
参考)https://wada7772.com/blog/notice_from_the_office/post-699.html
不動産売却時においては、同一の取引先からの売買代金の受取金額が年間100万円を超える場合、マイナンバーの提出が義務付けられています 。これは土地や建物が数百万円から数千万円の高額取引となることが多いため、ほとんどの不動産取引でマイナンバーの提出が必要となることを意味します。
参考)https://www.nangoku-fudousan-baikyaku.jp/blog/detail503824/
eKYCシステムの導入効果:
マイナンバー法改正に伴い、不動産業界では包括的なデジタル化対応が求められます。宅建業法の改正と併せて、2025年1月には「囲い込み」防止のためのレインズへの物件取引状況登録が義務化され 、4月には宅建事業者の名簿記載事項の改正も予定されています 。
企業が準備すべき対応策:
📋 マイナンバー取扱規程の見直し
🖥️ システム整備とセキュリティ強化
📚 従業員研修と業務フローの整備
特に中小の不動産会社では、2015年の個人情報保護法改正で適用除外規定が廃止されており、マイナンバー管理については大企業と同等の責任が課されています 。
参考)https://biz.moneyforward.com/payroll/basic/98156/
マイナンバー制度の拡大により、不動産業界では長期的に業界の透明性向上が期待されます。将来的には不動産一つ一つに所有者のマイナンバーが紐付けられ、過去の取引履歴がデータベース化される可能性も指摘されています 。
参考)https://www.pro-search.jp/blog/case27/
これにより、不動産価格の透明性が向上し、適正な市場価格形成が促進される一方で、個人情報の流出リスクや悪用の危険性も存在します 。
リスク管理のポイント:
2025年9月以降には健康保険証のスマートフォン利用も本格化し 、モバイル端末を活用した本人確認システムの導入も検討する必要があります。また、2025年4月には預貯金口座のマイナンバー管理法も施行予定で 、金融機関との連携においても新たな対応が求められます。
参考)https://www.tekizai.jp/recruit/column/lifestyle5/
不動産業界におけるデジタルトランスフォーメーションは避けて通れない道筋であり、早期の対応準備が競争優位性の確保につながります。制度変更を機会と捉え、業務効率化と顧客サービス向上を同時に実現する戦略的な取り組みが重要です。