生前贈与非課税制度の基礎知識と税制改正

生前贈与非課税制度の基礎知識と税制改正

生前贈与の非課税制度について、110万円控除や住宅取得資金贈与など各種特例制度をわかりやすく解説します。2025年度税制改正の影響や不動産業に特有の注意点についても詳しく説明。最新の税制改正でどのような変更点があるのでしょうか?

生前贈与非課税制度

生前贈与の非課税制度の概要
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暦年課税(110万円控除)

最も一般的な非課税制度で、年間110万円まで贈与税が非課税

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住宅取得資金贈与の非課税枠

祖父母や父母から子・孫への住宅取得資金は最大1,500万円まで非課税

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配偶者控除(おしどり贈与)

夫婦間の居住用不動産の贈与は2,000万円まで非課税特例を適用可能

生前贈与非課税の基礎控除110万円の活用方法

生前贈与における贈与税の基礎控除は、暦年課税において最も基本的な非課税制度です。1年間(1月1日から12月31日まで)に贈与を受けた財産の合計額が110万円以下であれば、贈与税は一切かかりません。
この制度の特徴として、贈与を受ける人ごとに判定されるという点が挙げられます。たとえば、父親が2人の子どもにそれぞれ100万円ずつ現金を贈与した場合、合計200万円の贈与を行っていますが、各子どもが受け取った額は110万円未満のため、どちらも贈与税の申告は不要となります。
暦年贈与のメリット

  • 毎年継続して利用可能
  • 贈与する相手に制限がない
  • 申告手続きが不要(110万円以下の場合)
  • 現金以外の財産でも適用可能

ただし、相続開始前3年間に行った贈与については、相続税の計算時に相続財産に加算されるルールがあります。この点は税制改正により、将来的には加算期間が延長される可能性もあるため、早期の対策が重要です。

生前贈与非課税の住宅取得資金贈与制度

住宅取得資金贈与の非課税制度は、父母や祖父母から子や孫に対する住宅取得資金の贈与について、一定額まで贈与税が非課税となる特例です。この制度は不動産業界に従事する方にとって特に重要な制度といえます。
非課税限度額
住宅の性能や消費税率によって限度額が異なります。

  • 省エネ等住宅の場合:最大1,500万円
  • 一般住宅の場合:最大1,000万円

制度の特徴

  • 基礎控除110万円と併用可能
  • 相続開始前3年以内でも相続財産に加算されない
  • 直系尊属からの贈与に限定

注意すべき点
以下のケースでは制度の対象外となります。

  • 配偶者の親からの贈与
  • 不動産そのものの贈与(金銭以外)
  • 住宅ローン返済資金としての贈与

この制度を活用する際は、住宅の契約締結日や引き渡し時期について十分な注意が必要です。また、贈与を受けた年の翌年3月15日までに確定申告が必要となります。

 

生前贈与非課税の配偶者控除(おしどり贈与)

配偶者控除の特例、通称「おしどり贈与」は、婚姻期間が20年以上の夫婦間で居住用不動産またはその取得資金を贈与する場合に適用される制度です。
制度の概要

  • 基礎控除110万円 + 配偶者控除2,000万円 = 合計2,110万円まで非課税
  • 婚姻期間20年以上の夫婦が対象
  • 同一配偶者からの贈与は生涯で1回のみ適用

対象となる財産

  • 居住用不動産(土地・建物)
  • 居住用不動産の取得資金

適用要件

  • 贈与年の翌年3月15日までに居住開始
  • その後も継続して居住する見込み
  • 贈与税の確定申告が必要

この制度は、将来の相続税対策として配偶者への財産移転を検討している場合に非常に有効です。特に不動産の評価額が高い場合や、相続時の配偶者の税負担を軽減したい場合に活用されています。

 

生前贈与非課税における2023年度税制改正の影響

2023年度税制改正では、生前贈与に関する重要な変更が行われました。これらの改正は、相続税・贈与税の一体化を進める方向性を示しており、今後の生前贈与戦略に大きな影響を与えます。
主な改正内容

  • 相続時精算課税制度の改正:年間110万円の基礎控除新設
  • 暦年課税における相続財産加算期間の延長(3年→7年)
  • 教育資金一括贈与の非課税制度の見直し

相続時精算課税制度の変更点
従来の相続時精算課税制度では、一度選択すると110万円の基礎控除が利用できませんでしたが、改正により年間110万円の基礎控除が新設されました。これにより、2,500万円の特別控除と年間110万円の基礎控除の両方を活用できるようになりました。

 

実務への影響
この改正により、従来の暦年贈与による節税効果が減少する一方で、相続時精算課税制度の活用メリットが向上しています。特に、将来的に価値上昇が見込まれる不動産については、早期の贈与による節税効果が期待できます。

 

不動産業界への影響
不動産の生前贈与を検討するクライアントに対しては、改正内容を踏まえた適切なアドバイスが求められます。特に、加算期間の延長により、短期的な節税戦略から長期的な視点での相続対策への転換が必要となっています。

 

生前贈与非課税制度の意外な盲点と対策

生前贈与の非課税制度には、一般的にはあまり知られていない注意点や盲点が存在します。これらを理解しておくことで、予期しない税務リスクを回避することができます。

 

定期贈与の認定リスク
毎年同額を同じ時期に贈与し続けると、税務署から「定期贈与」と認定される可能性があります。例えば、10年間にわたって毎年100万円を贈与する約束をした場合、初年度に1,000万円の贈与があったとみなされるリスクがあります。
対策方法

  • 贈与額を毎年変動させる
  • 贈与時期をずらす
  • 贈与契約書を毎年作成する
  • 受贈者の口座で資金を管理させる

名義預金の問題
贈与したお金を贈与者が管理し続けている場合、「名義預金」として相続財産に含まれる可能性があります。真正な贈与として認定されるためには、受贈者が実質的に財産を支配・管理していることが重要です。

 

贈与契約書の重要性
口約束での贈与は後々トラブルの原因となります。以下の内容を明記した贈与契約書の作成が必須です:

  • 贈与者・受贈者の情報
  • 贈与財産の詳細
  • 贈与の意思表示
  • 贈与の時期と方法

不動産特有の注意点
不動産の生前贈与では、以下の費用も考慮が必要です。

これらのコストを含めて総合的に判断することで、真に有効な相続対策を実現できます。