
生前贈与における贈与税の基礎控除は、暦年課税において最も基本的な非課税制度です。1年間(1月1日から12月31日まで)に贈与を受けた財産の合計額が110万円以下であれば、贈与税は一切かかりません。
この制度の特徴として、贈与を受ける人ごとに判定されるという点が挙げられます。たとえば、父親が2人の子どもにそれぞれ100万円ずつ現金を贈与した場合、合計200万円の贈与を行っていますが、各子どもが受け取った額は110万円未満のため、どちらも贈与税の申告は不要となります。
暦年贈与のメリット
ただし、相続開始前3年間に行った贈与については、相続税の計算時に相続財産に加算されるルールがあります。この点は税制改正により、将来的には加算期間が延長される可能性もあるため、早期の対策が重要です。
住宅取得資金贈与の非課税制度は、父母や祖父母から子や孫に対する住宅取得資金の贈与について、一定額まで贈与税が非課税となる特例です。この制度は不動産業界に従事する方にとって特に重要な制度といえます。
非課税限度額
住宅の性能や消費税率によって限度額が異なります。
制度の特徴
注意すべき点
以下のケースでは制度の対象外となります。
この制度を活用する際は、住宅の契約締結日や引き渡し時期について十分な注意が必要です。また、贈与を受けた年の翌年3月15日までに確定申告が必要となります。
配偶者控除の特例、通称「おしどり贈与」は、婚姻期間が20年以上の夫婦間で居住用不動産またはその取得資金を贈与する場合に適用される制度です。
制度の概要
対象となる財産
適用要件
この制度は、将来の相続税対策として配偶者への財産移転を検討している場合に非常に有効です。特に不動産の評価額が高い場合や、相続時の配偶者の税負担を軽減したい場合に活用されています。
2023年度税制改正では、生前贈与に関する重要な変更が行われました。これらの改正は、相続税・贈与税の一体化を進める方向性を示しており、今後の生前贈与戦略に大きな影響を与えます。
主な改正内容
相続時精算課税制度の変更点
従来の相続時精算課税制度では、一度選択すると110万円の基礎控除が利用できませんでしたが、改正により年間110万円の基礎控除が新設されました。これにより、2,500万円の特別控除と年間110万円の基礎控除の両方を活用できるようになりました。
実務への影響
この改正により、従来の暦年贈与による節税効果が減少する一方で、相続時精算課税制度の活用メリットが向上しています。特に、将来的に価値上昇が見込まれる不動産については、早期の贈与による節税効果が期待できます。
不動産業界への影響
不動産の生前贈与を検討するクライアントに対しては、改正内容を踏まえた適切なアドバイスが求められます。特に、加算期間の延長により、短期的な節税戦略から長期的な視点での相続対策への転換が必要となっています。
生前贈与の非課税制度には、一般的にはあまり知られていない注意点や盲点が存在します。これらを理解しておくことで、予期しない税務リスクを回避することができます。
定期贈与の認定リスク
毎年同額を同じ時期に贈与し続けると、税務署から「定期贈与」と認定される可能性があります。例えば、10年間にわたって毎年100万円を贈与する約束をした場合、初年度に1,000万円の贈与があったとみなされるリスクがあります。
対策方法
名義預金の問題
贈与したお金を贈与者が管理し続けている場合、「名義預金」として相続財産に含まれる可能性があります。真正な贈与として認定されるためには、受贈者が実質的に財産を支配・管理していることが重要です。
贈与契約書の重要性
口約束での贈与は後々トラブルの原因となります。以下の内容を明記した贈与契約書の作成が必須です:
不動産特有の注意点
不動産の生前贈与では、以下の費用も考慮が必要です。
これらのコストを含めて総合的に判断することで、真に有効な相続対策を実現できます。