
信託受益権評価明細書は、国税庁が定める統一様式(資4-33-A4統一)を使用して作成します 。書類の上段部分では、被相続人氏名または贈与者氏名を記載し、信託契約の基本的な内容を正確に転記する必要があります。
参考)https://tax.prime-partners.co.jp/%E3%80%90%E5%88%9D%E5%BF%83%E8%80%85%E5%90%91%E3%81%91%E3%80%91%E4%BF%A1%E8%A8%97%E5%8F%97%E7%9B%8A%E6%A8%A9%E3%81%AE%E8%A9%95%E4%BE%A1%E6%98%8E%E7%B4%B0%E6%9B%B8%E3%81%AE%E6%9B%B8%E3%81%8D%E6%96%B9/
具体的な記載項目として、以下の要素が含まれます。
記載時には信託契約書を参照し、各項目を正確に転記することが重要です 。信託財産については、その所在地、種類(土地、建物、預貯金、株式等)、数量を具体的に記載し、評価の基礎となる情報を明確にします。
財産評価基本通達202に基づく信託受益権の評価は、受益者のパターンによって記載方法が大きく異なります 。最も基本となる区分は、「元本と収益の受益者が同一人である場合」と「元本と収益の受益者が異なる場合」です。
参考)https://chester-tax.com/academy/blog/hyouka/%E4%BF%A1%E8%A8%97%E5%8F%97%E7%9B%8A%E6%A8%A9%E3%81%AE%E7%9B%B8%E7%B6%9A%E7%A8%8E%E8%A9%95%E4%BE%A1-14761
同一受益者の場合の記載例。
評価明細書の「1 元本と収益との受益者が同一人である場合」の欄を使用し、信託財産の種類ごとに相続税評価額を記載します。受益者の受益割合が100%の場合は「100%」、一部受益の場合は該当割合を記載し、最終的な評価額は「信託財産の相続税評価額×受益割合」で計算します 。
異なる受益者の場合の記載例。
「2 元本と収益との受益者が異なる場合」の欄を使用し、元本受益権と収益受益権を分離して評価します。収益受益権については、将来受けるべき利益の価額に基準年利率による複利現価率を乗じて現在価値を算出し、元本受益権は信託財産全体の評価額から収益受益権の価額を差し引いて計算します 。
参考)https://minjishintaku-kazokushintaku.com/archives/106
収益受益権の評価において、複利現価率を用いた記載例は特に複雑な部分です 。この計算では、国税庁が毎年発表する基準年利率を使用し、将来受け取る利益を現在価値に割り引きます。
具体的な記載手順として、評価明細書の「ロ 収益の受益権」欄に以下の項目を記載します。
例えば、年間収益が100万円で、3年間継続する場合、各年の複利現価率(仮に2.5%の基準年利率の場合)を適用し、現在価値の合計を算出します 。この計算は複数年にわたる場合、各年分を個別に計算し合算する必要があります。
参考)http://www.taxaccounting-shien.com/contents/hyoka_14
評価明細書の記載において、最も重要な注意点は信託契約書の内容を正確に反映することです 。記載例を参考にする際も、個別の信託契約の特徴を見落とすことなく適用する必要があります。
特に注意すべき記載事項。
また、信託財産に不動産が含まれる場合は、別途「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」の作成が必要となり、上場株式が含まれる場合は「上場株式の評価明細書」も併せて作成する必要があります 。これらの関連書類との整合性を保った記載が求められます。
実務において、教科書的な記載例では対応困難な特殊な信託契約が存在します。例えば、複層化信託や受益権が細分化された信託では、従来の記載例では十分に対応できない場合があります 。
このような複雑な信託構造では、受益権の時価評価が困難になることが多く、収益還元法による独自の評価方法を採用する場合があります 。東京地裁平成30年9月12日判決では、信託不動産の収益価格を基準とした受益権評価の事例が示されており、固定資産評価額や実際の売買代金との比較検討による評価方法が採用されています。
参考)https://umino-legal.jp/blog/1160/
実務的な対応策として。
これらの実務処理により、適正な申告と将来的な税務調査リスクの軽減を図ることができます 。特に高額な信託財産を扱う場合や、革新的な信託スキームを利用する場合には、このような慎重なアプローチが不可欠です。
国税庁の信託受益権評価明細書様式と記載要領の詳細
財産評価基本通達における信託受益権の評価規定の全文