

租税特別措置法第42条の3の2は、中小企業者等の法人税率の特例を定めた重要な規定です 。この特例により、対象となる中小企業者等は、各事業年度の所得金額のうち年800万円以下の金額に対して、本則税率19%から軽減された15%の法人税率が適用されます 。
参考)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/sochiho/750214/01/01_42_03.htm
この制度は、中小企業の税負担を軽減し、企業の成長を支援することを目的として平成21年度の税制改正により創設されました 。宅建業を営む法人についても、一定の要件を満たせばこの特例の適用を受けることができるため、不動産業界においても重要な税務上の制度となっています。
参考)https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/091228/03_01.htm
中小企業者等の法人税率の特例の適用を受けるための対象法人の要件は厳格に定められています 。普通法人のうち、各事業年度終了の時において資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下であるもの、または資本もしくは出資を有しないものが基本的な対象となります。
参考)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5432.htm
ただし、以下の法人は適用対象から除外されます。
宅建業を営む法人の場合、多くは中小企業であることが多いため、資本金要件を満たしていれば基本的にこの特例の適用対象となり得ます 。しかし、大手不動産会社の子会社として設立された宅建業者の場合、親会社との関係により適用除外となる可能性があるため注意が必要です。
参考)https://www.zennichi.or.jp/law_faq/%E5%AE%85%E5%BB%BA%E6%A5%AD%E6%B3%95%E4%B8%8A%E3%81%AE%E5%A3%B2%E4%B8%BB%E3%81%AE%E7%BE%A9%E5%8B%99/
中小企業者等の法人税率の特例における軽減税率の計算は、所得金額に応じて段階的に適用されます 。年800万円以下の所得金額については15%の軽減税率が適用され、800万円を超える部分については通常の法人税率23.2%が課されます。
参考)https://koyano-cpa.gr.jp/nobiyo-kaikei/column/6830/
事業年度が1年に満たない法人の場合、特別な計算方法が適用されます 。具体的には、800万円を12で除し、当該事業年度の月数を乗じて計算した金額が基準となり、1,000円未満の端数がある場合は切り捨てられます。
参考)https://www.zeiken.co.jp/hourei/HHSOZ000030/42-3-2-1.html
所得金額が10億円を超えた事業年度については、特別な取扱いが設けられており、軽減税率が17%に引き上げられます 。これは、大規模な中小企業者等に対する優遇措置の適正化を図る観点から導入された制度です。
宅建業を営む法人においても、物件売却により一時的に大きな所得が発生する場合があるため、この10億円基準についても理解しておくことが重要です。
中小企業者等の法人税率の特例において、適用除外事業者の範囲は明確に定められています 。適用除外事業者と判定された場合、以下の特例措置の適用を受けることができません。
参考)https://aoi-tax.ne.jp/30-31-tekiyoukahi/
適用除外事業者の主な要件として、資本金が5億円以上の法人との完全支配関係がある場合や、通算制度を採用している法人グループに属する場合が挙げられます 。
宅建業界においては、大手不動産会社が設立した子会社や関連会社が多数存在するため、親会社との資本関係を正確に把握し、適用除外事業者に該当しないかを慎重に検討する必要があります。また、グループ企業間での通算制度を利用している場合も、軽減税率の適用対象から除外される点に注意が必要です。
宅建業を営む法人には、一般的な事業会社とは異なる特殊な事業特性があります 。例えば、宅建業法上の8種規制により、自ら売主となる場合には様々な制限が課されており、手付金等の保全措置や割賦販売の契約解除等について特別な規定が設けられています。
参考)https://takken-fudosan.com/01-takken-42/
宅建業者の収益構造は、仲介手数料収入と自ら売主となる場合の売買益に大別されますが、特に後者については物件の取得から売却までの期間や金額が大きく変動することが特徴です。このため、年度によって所得金額に大きな差が生じることが多く、措置法第42条の3の2の軽減税率適用の恩恵を受けやすい業種といえます。
また、宅建業法施行令第3条に定められた法令上の制限により、都市計画法や建築基準法等の様々な規制を受ける不動産を取り扱う場合があります 。これらの法的制約は、事業運営コストや収益性に影響を与える要因となるため、税務上の優遇措置の重要性が高まります。
中小企業者等の法人税率の特例の適用期限は、2025年度税制改正により令和9年3月31日まで2年間延長されました 。この延長措置により、中小企業の税負担軽減策が継続されることになり、宅建業を営む中小法人にとっても引き続き重要な制度となります。
参考)https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2025/explanation/PDF/p0425-0554.pdf
制度の延長に伴い、いくつかの変更点も導入されています。特に、通算法人が対象法人から除外されたことや、認定NPO法人に関する特別な取扱いが設けられたことが主な改正内容です 。
将来的には、中小企業支援政策の一環として、さらなる制度の拡充や要件の見直しが行われる可能性があります。宅建業界においても、デジタル化の進展や市場環境の変化に対応するため、税制面での支援措置の重要性は高まっていくと考えられます。
法人税の申告時には、適用額明細書を税務署に提出することが必要であり、適切な手続きを怠ると特例の適用を受けることができないため、税務専門家との連携が重要です 。