
相続税評価額の計算は、国税庁が定めた「財産評価基本通達」に従って行います。この基本原則は「相続が起きた日時点の換金価値」をベースとしており、預金のような簡単な財産であれば相続開始日の残高がそのまま評価額となります。
しかし、土地や建物の不動産については、相続開始時点での換金価値ではなく、国税庁が定めた評価方式(路線価方式、倍率方式)で評価を行うことが特徴的です。
建築業界従事者にとって重要なのは、この評価方式が実際の建築コストや市場価格とは異なる論理で構成されている点です。相続税の評価額は実際の売買価格(時価)よりも低く設定されているため、その差額を理解することが相続税対策の第一歩となります。
財産評価基本通達の主な特徴:
土地の相続税評価額は「路線価方式」と「倍率方式」の2つの方法で計算します。
路線価方式による計算:
路線価方式は市街地や住宅地など、路線価が設定されている地域で使用されます。基本的な計算式は以下の通りです:
相続税評価額 = 路線価 × 土地面積 × 各種補正率
例えば、路線価が40万円/㎡、土地面積が200㎡、奥行価格補正率が0.95の場合、評価額は「40万円×200㎡×0.95=7,600万円」となります。
主な補正率の種類:
倍率方式による計算:
路線価が設定されていない地域では倍率方式を使用します。計算式は:
相続税評価額 = 固定資産税評価額 × 倍率
固定資産税評価額が1,000万円で倍率が1.1の土地の場合、相続税評価額は「1,000万円 × 1.1 = 1,100万円」となります。
建築業界従事者が知っておくべき特殊なケースとして、貸地の評価があります。土地を誰かに貸していた場合の相続税評価額は。
相続税評価額 = 更地の評価額 × (1−借地権割合)
借地権割合は国税庁が地域ごとに30〜90%の間で定めており、土地の利用価値が高いエリアほど借地権割合も高くなる傾向があります。
建物の相続税評価額は土地と比較して計算方法がシンプルです。自用家屋(自分で使用している建物)の場合。
家屋の相続税評価額 = 固定資産税評価額 × 1.0
つまり、家屋の相続税評価額は基本的に固定資産税評価額と同じ金額になります。これは戸建て住宅でも、マンションやアパートの場合でも計算式に違いはありません。
他人に貸している家屋(貸家)の場合:
戸建て貸家の計算式は以下の通りです。
貸家の相続税評価額 = (1−借家権割合)× 固定資産税評価額
借家権の割合は全国一律30%で、家屋の評価額から差し引くことが可能です。例えば固定資産評価額が2,000万円の家屋を貸していた場合、借家権割合30%を適用すると、相続税評価額は「2,000万円 × (1-0.3) = 1,400万円」となります。
建築業界従事者にとって重要な情報として、マンションの評価方法の改正があります。令和6年1月1日以降、マンションの高層階や築浅マンションについては評価方法の改正により評価額が高くなる可能性があります。
建物評価のポイント:
相続税の節税対策において最も重要なのは「土地の評価額を下げること」です。土地の評価額が下がれば、当然課税される相続税が少なくなるからです。
実務的な節税アプローチ:
1. 財産評価の正確な算出
土地の評価は相続財産の中で最も複雑とされており、土地の形状や状況を把握する段階で細かいポイントを見落とすと節税機会を逃してしまいます。
2. 小規模宅地等の特例活用
居住用宅地で330㎡以下の場合、評価額を80%減額できる特例があります。例えば評価額が1億円の居住用宅地なら「1億円 × (1 - 0.8) = 2,000万円」と大幅に評価額を下げることができます。
3. 固定資産税からの割り戻し計算
簡易的な評価額算出方法として、固定資産税の課税明細書の金額を0.7で割って0.8を掛ける方法があります。例:48,055,280円 ÷ 0.7 × 0.8 = 54,920,320円。
建築業界独自の節税視点:
建築業従事者が相続税評価額計算で特に注意すべき点として、建築コストと税評価額の大きな乖離があります。
新築時の建築費用が5,000万円の建物でも、固定資産税評価額は建築費用の50〜70%程度になることが一般的です。これは固定資産税評価基準が実際の建築コストとは異なる評価体系を採用しているためです。
建築業界特有の評価ポイント:
1. 構造種別による評価差
2. 建築年数による減価の考慮
建物は築年数に応じて固定資産税評価額が下がりますが、土地価格の上昇により全体の相続税評価額が上がるケースもあります。
3. 特殊建築物の取り扱い
工場建築物や特殊用途建築物は、一般住宅とは異なる評価方法が適用される場合があります。建築基準法上の用途分類と税法上の評価方法を正確に把握することが重要です。
4. 建築確認との関連性
違法建築や既存不適格建築物は評価額に影響を与える可能性があります。建築業従事者として建築基準法適合性の確認は必須です。
実務での活用法:
建築業界の専門知識を活かした相続税評価額の適正化により、相続税負担の軽減と適正な税務申告の両立が可能になります。特に、建築技術基準と税法評価基準の違いを理解することで、より精緻な相続税対策を提案できるでしょう。