
建物の相続税評価額を計算するために最初に必要なのが、固定資産税評価額の正確な把握です。この評価額は毎年4月から6月頃に各市町村から送付される「固定資産税課税明細書」に記載されています。
固定資産税課税明細書には以下の情報が記載されています。
明細書を紛失した場合でも、名寄帳や固定資産評価証明書を市町村の税務課で取得することで確認できます。これらの書類は相続税申告の際にも必要書類となるため、必ず取得しておきましょう。
建築から間もない建物の場合、固定資産税評価額は一般的に建築費の60~70%程度に設定されています。この点も評価額を予想する際の参考となります。
被相続人が自宅として居住していた建物や、事業用として利用していた建物の相続税評価額は最もシンプルな計算方法です。
計算式:固定資産税評価額 × 1.0
つまり、固定資産税評価額がそのまま相続税評価額となります。
具体例:
この計算方法は以下の建物に適用されます。
一戸建てだけでなく、分譲マンションの場合も同様の計算方法となります。ただし、マンションの場合は専有部分(室内)と敷地利用権(土地の共有持分)を分けて評価する必要があります。
自用建物の場合、特別な減額措置はありませんが、建物の相続税評価額は一般的に実勢価格よりも低くなる傾向があるため、相続税の負担軽減効果は期待できます。
建物を第三者に賃貸している場合、借家人の権利(借家権)を考慮して相続税評価額を減額できます。この制度は賃貸経営による相続税対策の重要な要素です。
計算式:固定資産税評価額 × (1 - 借家権割合 × 賃貸割合)
一棟全体を賃貸している場合(賃貸割合100%):
部分的に賃貸している場合:
賃貸割合の計算では、契約書上の賃貸面積ではなく実際に賃貸されている面積で判定します。空室がある場合は、その分は賃貸割合から除外されるため注意が必要です。
ただし、親族間での賃貸や著しく低額な賃料での賃貸の場合、借家権の評価減が認められない場合があります。
相続開始時点で建築工事が完了していない建物についても、相続税の課税対象となります。これは建築業界では「青田相続」とも呼ばれるケースです。
計算式:費用原価の額 × 70%
費用原価の額とは、相続開始日までに実際に支払った建築費用の総額です。設計費、材料費、工事費、付帯工事費などすべてを含みます。
具体例:
この70%という係数は、建築中の建物が完成済み建物と比較してリスクや流動性の面で劣ることを考慮したものです。
建築中建物の評価で重要なポイント。
建築請負契約を結んだ直後に相続が発生した場合、まだ着手金しか支払っていない状況では評価額が低くなる一方で、完成間近の場合は相当額の評価となるため、相続タイミングによる影響が大きい点に注意が必要です。
相続開始前に増改築を行った建物については、固定資産税評価額に反映されていない部分を別途評価する必要があります。これは建築業界特有の評価問題です。
計算式:増改築前の固定資産税評価額 + (増改築費用 - 相続開始日までの償却費)× 70%
償却費の計算方法:
増改築費用 × 90% × 経過年数 ÷ 法定耐用年数
法定耐用年数の例:
具体的な計算例:
償却費の計算:
500万円 × 90% × 11年 ÷ 22年 = 225万円
相続税評価額:
2,000万円 + (500万円 - 225万円)× 70% = 2,192万5,000円
増改築特有の注意点。
この評価方法により、最近増改築を行った建物では固定資産税評価額よりも相続税評価額が高くなるケースがあります。相続対策を検討する際は、増改築のタイミングも考慮に入れることが重要です。