マンション相続税計算方法評価額から節税対策まで

マンション相続税計算方法評価額から節税対策まで

マンション相続税の計算方法から評価額の算出、節税対策まで建築業従事者必見の情報をまとめました。令和6年改正による区分所有補正率の影響も詳しく解説いたします。

マンション相続税計算方法

マンション相続税の基礎知識
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建物部分の評価

固定資産税評価額がベースとなり、専有部分と共用部分を含めて算出されます

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土地部分の評価

路線価方式により敷地全体の価額から持分割合で按分して計算されます

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区分所有補正率の適用

令和6年以降は市場価格との乖離を是正する補正が適用されます

マンション相続税評価額の基本構成

マンション相続税の計算において最も重要な要素は、適切な評価額の算出です。マンションの相続税評価額は、一戸建て不動産と同様に「建物部分」と「土地部分」に分けて計算し、これらを合算して求めます。
相続税評価額 = 建物部分の相続税評価額 + 土地部分の相続税評価額
この基本構造を理解することが、正確な相続税計算の第一歩となります。令和6年(2024年)1月1日以降に相続が発生する場合は、従来の計算方法に加えて区分所有補正率による補正が適用される点も重要なポイントです。
分譲マンションでは「住戸のみ」を購入したように感じますが、実際は「敷地の利用権」も含めて購入しているため、土地部分の評価も必要になります。これは建築業従事者として知っておくべき重要な知識の一つです。

マンション建物部分の計算方法

建物部分の相続税評価額は、基本的に固定資産税評価額と同額です。この評価額には、専有部分だけでなく、共用部分(玄関ホール・エレベータ・廊下・階段・駐車場・自転車置き場など)を住戸ごとに按分した価額も含まれています。
固定資産税評価額は、市町村から毎年送られてくる「固定資産税の課税明細書」に記載されています。課税明細書を紛失した場合は、市町村役場(東京23区では都税事務所)で「固定資産評価証明書」の交付を受けて確認することができます。
建物部分の相続税評価額 = 固定資産税評価額
また、おおよその額であれば「購入価格の70%」で計算することも可能です。正確な計算を行う際は、必ず固定資産税の課税明細書を参照することが重要です。
建築業に携わる方々にとって、この建物部分の評価は比較的理解しやすい部分でもあります。構造や築年数専有面積などの要素が評価に反映されているからです。

 

マンション土地部分の詳細計算

土地部分の相続税評価額は、マンションの敷地全体の評価額を持分割合(敷地権割合)で按分した金額となります。
土地部分の相続税評価額 = マンションの敷地全体の評価額 × 持分割合(敷地権割合)
マンションの敷地全体の相続税評価額は、基本的に「路線価方式」で計算します。路線価方式とは、市街地の道路に面した土地の「路線価」を元に、相続税評価額を計算する方法です。
路線価方式による計算式:路線価 × マンションの敷地全体の面積(㎡)
例えば、路線価が50万円で、マンション全体の面積が1,267㎡、持分割合が7,426/439,931の場合。

  • 敷地全体の評価額:50万円 × 1,267㎡ = 63,350万円
  • 土地部分の相続税評価額:63,350万円 × (7,426/439,931) = 1,070万円

路線価が定められていない地域では、固定資産税評価額に一定の倍率をかける「倍率方式」を用います。路線価と評価倍率は、国税庁のホームページで確認できます。
建築業従事者の皆様には、これらの評価方法が建物の立地条件や敷地条件に密接に関係していることを理解いただけるでしょう。

 

マンション相続税計算の具体例

実際の計算例を通じて、マンション相続税の算出方法を詳しく見てみましょう。

 

【計算条件】

  • 建物の固定資産税評価額:600万円
  • 路線価:50万円/㎡
  • マンション全体の敷地面積:1,267㎡
  • 敷地権割合:7,426/439,931

【建物部分の計算】
建物部分の相続税評価額 = 600万円
【土地部分の計算】
土地部分の相続税評価額 = 50万円 × 1,267㎡ × (7,426/439,931) = 1,070万円
【マンション全体の相続税評価額】
相続税評価額 = 600万円 + 1,070万円 = 1,670万円
この計算例では、比較的小さな持分割合であることがわかります。総戸数が多いマンションほど、各戸の土地の持分は小さくなるため、土地部分の評価額も相対的に小さくなる傾向があります。
建築業に従事する方々にとって、このような計算方法を理解することは、顧客への適切なアドバイスや企画提案において重要な知識となります。

 

相続税の総額計算
相続税は単純に評価額に税率をかけるのではなく、以下の手順で計算します。

  1. 正味の遺産総額を計算(各相続人の課税価格を合計)
  2. 課税遺産総額を計算(正味の遺産総額 - 基礎控除額)
  3. 相続税の総額を計算
  4. 各人が納める相続税額を計算

基礎控除額は「3,000万円 + (600万円 × 法定相続人数)」で算出されます。

区分所有補正率による令和6年改正の影響

令和6年(2024年)1月1日以降に相続が発生するマンションについては、従来の計算方法に加えて「区分所有補正率」による補正が適用されます。この改正は、マンション投資による節税対策に対する国税庁の対応策として導入されました。
改正後の計算式:
マンションの相続税評価額 = 建物部分の評価額 × 区分所有補正率 + 土地部分の評価額 × 区分所有補正率
この補正により、マンションの相続税評価額は市場価格の6割程度となり、戸建て住宅と同程度の乖離率になります。国税庁は「居住用の区分所有財産の評価に係る区分所有補正率の計算明細書」(計算ツール)を公表しており、これを利用して正確な補正率を算出できます。
区分所有補正率の算出要素:

  • マンション全体の総戸数
  • 敷地面積
  • 建物の階数
  • 各住戸の専有面積
  • 共用部分の面積

この改正により、特にタワーマンションなどの高級物件における相続税評価額が適正化されることになります。建築業従事者として、お客様にこの変更点を適切に説明できるよう準備が必要です。

 

建築業界においては、この改正がマンション開発や販売戦略に与える影響も考慮する必要があります。相続税対策としてのマンション購入のメリットが一定程度制限されることで、市場動向にも変化が生じる可能性があります。

 

国税庁の試算によると、2011年から2013年に売買された343物件の評価額は平均で「時価の3割ほど」でしたが、この補正により適正な水準に調整されることになります。